環境計画からアートの現場に越境し、幾多のプロジェクトを実践してきた著者が、世界有数の温泉地・別府を舞台に虚実織り交ぜ綴る、芸術とまち、芸術と環境を巡る思考の旅。 映画「マルコヴィッチの穴」を彷彿とさせる。感性への扉。 ——南川憲二(現代アートチーム目[mé]) こんなふうに、そこに行きたくなったことはない。 ——ナガオカケンメイ(デザイナー、D&DEPARTMENTディレクター) これほどセンシュアルな旅への誘いがあっただろうか。 湧き上がる雲のような知性が露結して、ポタポタと頭のうえに落ちてくる。ああ、気持ちがいい。人がなぜ芸術のまわりに集まってくるのか、どうすれば人と人とが幸せを共有できるのか。答えはぜんぶここにある。 ——港千尋(写真家、著述家、Art Bridge Institute ディレクター) 至る所で湯が湧き、まち全体が湯煙に包まれる世界有数の温泉地「別府」。この地で芸術祭のディレクターを務めた男が、次回に向けた迷いを抱えながら、何かを捜しにひとり別府を訪れる。彷徨い歩き、そこで出会った幻想的な風景や人、出来事に導かれ、彼が得たものとは? 本書はアートの力でその土地や環境の秘められた可能性を解放するプロジェクトを国内外で展開してきた芹沢高志が、ディレクターを3度務めた別府を舞台に、虚実織り交ぜ綴った、芸術とまち、芸術と環境を巡る思考の旅の軌跡。淡く瑞々しい、時に魔術的で猥雑な別府の風景。ふいに呼び覚まされる、映画のワンシーンや書物のことば、旅の記憶や手掛けたプロジェクトのエピソード。次第にゆっくりと「わたし」のなかに、芸術とまち、芸術と環境の関係、その意義や可能性が形を成していくその過程を、丁寧に描き出す。 芸術祭のコンセプトを紀行文学の体裁で伝えるという、先鋭的な試みでもあった本書を、装いも新たに刊行します。 「別府。湯の上に浮かぶ魔術的な港町。 あまりの美しさに、一瞬、この眺めは鶴見岳の夢ではないのかと思えた。数十億年の時のなかで、火男、火女の両神が見る、うたかたの夢ではないのかと……。 次に別府は、私に何をさせるのだろう」(本書より) *本書は、別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」のコンセプトブックとして刊行された『別府』に一部修正を加え出版するものです。
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