世界史はモンゴルを待っていた――草原の遊牧国家が、ユーラシアの東西を結ぶ。チンギスから、クビライの奪権まで。モンゴル軍少年部隊――モンゴル遠征軍の主力は、少年部隊であった。モンゴル高原を出発する時は、10代の、それも前半の少年であることが多かった。彼らは長い遠征の過程で、さまざまな体験をし、実地の訓練を通して、次第にすぐれた大人の戦士になっていった。……こうした少年兵にとって、遠征の出発は人生への旅立ちでもあった。……彼らは遠征先で、そのまま落ち着いてしまうことも、しばしばあった。その場合、今やすっかり大人となったかつての少年兵や、さらにその子孫たちも、やはり「モンゴル」であることには変わりがなかった。はるかなるモンゴル本土の高原には、兄弟姉妹、一族親類がいた。帰るべき心のふるさとは、みなモンゴル高原であった。……今や、名実ともに世界帝国への道をたどりつつあった「イェケ・モンゴル・ウルス」にとって、モンゴル高原の千戸群こそが、すべての要であった。高原は、「祖宗興隆の地」であるとともに、まさしく「国家根本の地」であった。そして、その地とそこの牧民たちの保有こそがモンゴル大カアンたる証であり、権力のすべての根源であった。――本書より
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