『PM2』は36年前の出版ですが、当時アーチストによる日本で初めてのパフォーマンス・マガジンと言って良いでしょう。復刻にあたって、改めて半ば手作り本と言ってもいい荒々しい作りの書物を読み直しました。その後の芸術文化の停滞気味の動きをみると、生々しい「第一義の表現」のオンパレード、職業・国籍・差別を超えた真っ向のメッセージ集など、万人が立ち返るべき表現の原点であると直感しました。そして、いま様々な権力の露骨なまでの介入、新型コロナの世界的感染による逃げ場のない圧迫状況下で、「アート以後のアート」という重い課題に真っ向に向き合う者として、復刻版の出版というかなり面倒な作業に突入することを決心しました。『PM2』は、1983~1984 の約2年間に、新宿アートシアターで連日展開したパフォーマンス・ワークショップ『G-day PLAN』の活動記録が発端です。「誰でも参加自由/毎回即興」などの『G-day PLAN』スピリットで、出版から販売まで、即興的(?)に奮闘した経緯を簡単に紹介します。新宿駅から、歩いて7、8分、花園神社を越えてすぐにある新宿アートシアターには、小劇場と稽古スタジオがある。利用者がない日は自由に使用OK との、オーナーのI 氏。スタッフのW 氏は、G-day PLAN の主要メンバーに。この両氏のおかげで、連日の即興パフォーマンスが可能になった。出版に関しては、擁壁・護岸工事の会社の営業のN 氏が、取引先の印刷所に、無料での簡易印刷の話を進めてくれた。その善意に応えるべく、経費節減と、写真はコピーで使用、書き文字の多用と、手作り感満載の本作りとなった、書店での本の販売は、本を持参で、直接販売。当時、池袋の西武デパートにあった美術書専門店「アール・ヴィヴァン」のT 氏が、なんと50冊を預かってくれたのだが、それらが完売。30冊追加という、全く想定外の進展が生まれた。増補復刻版へのプロセスは14、5年前、北海道の釧路で、「池田一/水のアート・プロジェクト釧路」の発足の動きがあり、その時のトークショウに来てくれたうちの一人が「池田さん、今も大事にしてますよ、PM2 は、当時のバイブルでしょ!」という返事が帰ってきました。この話を、やはりアール・ヴィヴァンで『PM2』を購読したというTPAF 出版局の河合孝治氏に話したところ、「Art Crossing というアート・マガジンを発刊したいと思った発端は、『PM2』を見た衝撃でした」とのことで。それ以来、度々復刻版の刊行を勧められました。そして「自粛」ではなくて「自育」と決め込んで、1984 から2020 へと進化してきた『PM2』を増補して、完成させました。余分なモノを追っ払い、目を凝らすと、まっすぐな道のりが出現してきます。その路傍のテーブルで、明日のために乾杯!する日が遠くないことを願っています。(池田一)
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