私は高齢者を中心に診療している精神科医であるが,高齢者の精神医学的問題の多くは教科書的に好ましいとされる治療やケアと現実が乖離していることが多く, BPSDはその最たるものであると実感している。認知症患者も一人の人として最大限に尊重し,その人の視点に立って理解してあげなければならないし,良くない状態を作り上げている環境にも目を向ける必要がある。ところが,今の状態を何とかして欲しいという疲弊した介護者を目の当たりにするとパーソン・センタード・ケアの話は通用せず,非薬物療法よりも薬物療法を優先してしまうことが多い。 言い訳がましくなるが, BPSDに対する薬物療法の有効性や忍容性は定量化しやすく一定のエビデンスが明らかとなっているが,どのような介護ケアが有効であるかはそれぞれの経験に基づいていたものが多く,一つひとつが科学的に検証されていないのではないかという思い込みも,薬物療法を優先してしまう要因の一つかもしれない。 これまで認知症患者に対するケアの実際は,ナラティブアプローチによるものであると思われていたが,近年,科学的根拠に基づくケアが取り上げられるようになった。BPSDに対するケアも新たな局面に入り,そこにはエビデンスに基づくケアに対する期待と現状での課題も明らかとなっている。 BPSDに対する書籍,文献は数多く存在するが,最新のBPSDに対するケアはあまり取り上げられていない。このような背景から本特集では, BPSDに対して科学的な根拠に基づいたケアをされている最前線の研究者の方々から新たな試みと課題を簡潔でわかりやすくご執筆いただいた。誌面をお借りして厚く御礼を申し上げたい。 本特集が医療と介護現場の關係者がお互いを理解し,より緊密な連携を図る一助になれば幸いである。 (下田 健吾)
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