世界最貧国の祖国から来日し、栄光を手にした稀代の経営者・重光武雄は、巨額資金を韓国事業に投じ日韓の経済発展段階ギャップを利用した「タイムマシーン経営」を実践して巨大財閥を築き上げた。1997年のIMF通貨危機後は、韓国での財閥ランクを当時の10位前後から一気に引き上げることに成功している。 この経営者がしたことを多くの日本人は知らない。 舞台は「昭和」だが、本書に描かれていることは創業者/オーナー経営に特有なことではない。重光の評伝をまとめることが結果的に差別化や競争戦略、オーナーシップ、独創性を物語る「マネジメントの手本」になった。 (はじめにより) 重光武雄と辛格浩。日本と韓国それぞれで地歩を築いた巨大企業「ロッテ」を創った男は、生涯2つの名前を使い分けた。 日本に渡り、早稲田で学び、会社を興して大手菓子メーカーを中心とする日本のロッテグループを築いたのは重光武雄である。在日本大韓民国民団(民団)の支援者として中央本部の経済顧問も務め、日本から資金を送って韓国に巨大なコングロマリットを築いたのは辛格浩だった。 最も経済的に成功した在日一世であり、韓国社会の近代化の礎を築いた最後の第1世代創業企業家、つまりは財閥の創始者でもある。日本に帰化することなく、その生涯を終えている。 (第12章より) 韓国にいると日本のことがよく分かるし、逆もある。ずっと日本に住んでいると、日本のいいところ、悪いところが見えなくなる。第三者的に見ると見えてくるものがあるんですよ。 (第15章より) 「自分を自慢するのが好きな人、自分を宣伝する人がたくさんいる。しかし私は自慢することが好きではない。だから自分の本を出すのも嫌だ。私には自慢するものが何もない」と家族に漏らしていた重光だが、唯一の自慢話が、雇用に関することだったという。 いわゆるリストラを重光は一度も行わなかった。会社の業績が厳しかったときには生産現場の社員を営業に異動して乗り越えている。(中略) ロッテ生え抜き社員の証言には共通点がある。重光というリーダーに仕え、育ててもらったことへの感謝の念である。これは、重光が「人を見る目」を備えていたこと、すなわち、適材適所のポストを与え自立的な育成をマネジメントしたことの証左でもある。
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