本書で示すインタビューは、2020年4月中旬から6月末という新型コロナの第一波が日本に上陸し、まさに日本政府が出した『緊急事態宣言』(4月7日発出その後全国へ、5月25日解除)下のなかにある人々を対象としている。しかも、外出が著しく自粛という形で禁止をされ、本当に身近な家族もしくは知り合いにzoom という最新の通話機器を用いてリアルに対面することを抑制された中で実施されたインタビュー集である。 本書では、たとえば、7・8割減ということにまで追い込まれた個人タクシー運転手が、ある日は誰一人お客さんがおらず、売り上げが0円の日もあり、休業したのは「あなたの勝手でしょ」という形で追い込まれて行く様子や、学費を奨学金やアルバイトでやりくりしていた女子学生は、延納手続きをしギリギリのやりくりをしている。韓国に旅行に行った女性は、楽観的な性格だったが、「反省したなあ。そういうのあかんなあ、そういう周り心配させたらあかんなって思った」という形で飛行機も減便されていく中で追い込まれて行く様子が描かれている。 毎日の献立を考えるある主婦は、「ニュースは主婦の気持ちを何ひとつわかっていないし、何も考えてないわ」と吐露し、目に見えない日々の日常の暮らしのなかで元気だった母親が次第に笑顔が消えていく様子を目撃する。また、シングルマザーで家族のことを考えると休業せざるを得なくなった派遣社員の女性は、健康においても収入面においてもさらに逼迫していく様子を「正社員さんは在宅するんですけど、派遣はみんな来てと言われている人も多い。通勤電車が危ないっていうなら、それはみんな同じじゃないですか。派遣社員だって通勤電車は危ないはずなのに、派遣社員はコロナにかかってもいいの?って思ってしまう。正社員さんは守られるけど・・・っていうのはどこも報道してないし。同一労働同一賃金と4月から施行されているのになって差を感じます」という形で正社員と非正規社員との格差の表出として語られている。 これらは当事者が現実に思っていても、語られる場もないし語ることもできない、なかなか表に出てこない言葉たちであるだろう。新型コロナウィルスが感染症だけではなく、日常的実践に深く影響を及ぼしていることを19のインタビューを通してみる。
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