企業、特にコンサルティング会社の採用現場などでは、単に頭がいい人ではなく、「地頭のいい人」が求められている。 インターネット情報への過度の依存が思考停止の危機を招き、検索ツールの発達による「コピペ(コピー&ペースト)族」が増殖しているいま、「考える」ことの重要性がかつてないほどに高まっているからだ。これから本当に重要になってくるのはインターネットやPCでは代替が不可能な、膨大な情報を選別して付加価値をつけていくという、本当の意味での創造的な「考える力」である。本書ではこの基本的な「考える力」のベースとなる知的能力を「地頭力(じあたまりょく)」と定義している。 では、地頭力とは何か。地頭力の本質は、「結論から」「全体から」「単純に」考える3つの思考力である。すなわち「結論から」考える仮説思考力、「全体から」考えるフレームワーク思考力、「単純に」考える抽象化思考力だ。 この3つの思考力は鍛えることができるものであり、地頭力を鍛える強力なツールとなるのが「フェルミ推定」である。「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」。こうした荒唐無稽とも思える問いへの解答を導き出す考え方のプロセスを問うのが、「フェルミ推定」だ。「フェルミ推定」と呼ばれるのは、「原子力の父」として知られ、ノーベル物理学賞受賞者でもある、エンリコ・フェルミ(1901~1954)に由来する。 本書では、「日本全国に電柱は何本あるか?」といった例題やその解答例から「フェルミ推定」のプロセスを紹介しつつ、「好奇心」「論理的思考力」「直感力」という地頭力のベースとそれらのベースの上に重なる仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの構成要素とその鍛え方を解説している。 本書は、季刊『Think!』2007年春号に掲載されて大きな反響を呼んだ「フェルミ推定で鍛える地頭力」をもとに全面的に書き下ろしたものである。本書が対象とするのは、「問題解決」を必要とする業務に携わるビジネスパーソンはもちろんのこと、「考える力」を向上させたいと考える学生なども含めたすべての職業の人である。フェルミ推定による地頭力トレーニングの世界を経験し、「地頭力」という武器を持ってインターネットの情報の大海をうまく乗り越え、読者なりの「新大陸」を発見してほしいというのが、著者から読者の皆さんへのメッセージだ。
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