2018年12月、70年ぶりに漁業法が改正されました。漁業法改正に伴い、水産資源の管理方法も大きく変更されることになりました。水産庁は2019年7月に、「新たな水産資源の管理について」を公表し、優先的に検討を開始するマサバなど4魚種について、新しい資源管理手法を提示し、説明会等を開催しています。しかし、「説明会で説明を聞いても、さっぱりわからない」という声をよく耳にしますが、水産資源学の基礎的な知識がないと、その内容を理解することは、かなりハードルが高いのは事実だと思います。 そこで「新たな水産資源の管理」を理解するために、最小限必要と思われる水産資源学の基礎的な事項について、やさしく解説することを第一の目的として本書を執筆しました。だたし、通り一遍の用語の説明等を読んだだけで、「新たな水産資源の管理」が理解できるほど、問題は簡単ではないことも、また事実です。そこで本書では、難しい数式などの使用をできるだけ避けながらも、専門書に負けないぐらいかなり本格的に、水産資源学の基礎的な概念や手法等を解説することにしました。 本書の第2の目的は、上記の管理方法の理論的な基礎となるMSY理論が、「実は誤りである」ということを説明することです。資源管理がうまくいかない最大の原因の一つは、「実は、MSY理論という誤った資源変動理論に基づいて、資源管理が設計・施行されているからである」ということです。MSY理論に代わる新しい資源変動理論に基づいて管理を実施しない限り、資源管理が成功することはないでしょう。本書を読んでいただければ、そのことがよくおわかり頂けると思います。「MSY理論が誤りである」ことを理解すること自体は、それほど難しい話ではありません。なぜなら、MSY理論を支持するデータが実在しない、ということが誰の目にも明白だからです。なぜ、そのようなMSY理論が、現在まで使い続けられているのか、きっと不思議に思われるに違いありません。 本書の第3の目的は、データ分析の面白さを知って頂きたいということです。実際のデータ(捏造ではない正しいデータ)を示しながら、全く正反対の結論を導き出すこと、つまり統計でウソをつくことは、実はとても簡単です。単純なミスか意図的かわかりませんが、分析の仕方に誤りがあり、結論が全く正反対になってしまっているケースが、実際にも多く見受けられます。そのような「統計のウソ」に騙されないためには、事実に基づいた正しい分析が行われているか否かを、しっかり見極める必要があります。「同じデータを使っても、分析の仕方によってこんなにも結果が変わってしまうんだ」ということが、本書を読んでいただければ、実感していただけるのではないかと思います。 本書が「新たな水産資源の管理について」を理解するための一助となることを、また、MSY理論が誤りであることが、広く認識されることを、強く願う次第です。
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