小さなひとが立ち、水が落ちるところに大地が広がり、糸やリボンが揺れるときに風が生まれ、ビーズやガラスが光をまねき入れる――内藤礼は、空間と対話しながら自然のエレメントや繊細なモチーフを組み合 わせ、またカンヴァス上に淡い色彩を重ねることで、根源的な生の光景を出現させてきました。『「人(わたし)が作る」を超えること』を問い続けてきた作家が、はじめて「創造」と向き合った展覧会「うつしあう創造」。それは人が自らを主体 であると認め、人になろうとする行為だと作家はいいます。人と自然、わたしとあなた、生と死、内と外、そして人と作品のあいだに生じる移し、写し、映し、遷し。「うつしあう」両者のあいだに顕われる生気、慈悲、それらとの一体感のうちに、生へと向かおうとする「創造」の瞬間がそこには満ちていました。本書は、畠山直哉の撮影により、大小さまざまな展示室や光庭、それをつなぐ通路によって構成される作品空間と、日中の自然光から、明かりが灯る夕刻以降へのうつろいをも追体験できる、贅沢な一冊となりました。[寄稿]内藤礼、島敦彦(金沢21世紀美術館館長)、星野太(早稲田大学専任講師、美学/表象文化論)、横山由季子(金沢21世紀美術館学芸員)※展覧会「内藤礼 うつしあう創造」は、2020年6月27日(土)から8月23日(日)まで、金沢21世紀美術館にて行われました。
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