[商品について]―仮託された「女性」が炙り出す西欧の本質とは―今日わたしたちが普遍的なものとして何の疑いもなく受け入れている規範には、個人の自由や平等など、西欧を源流とするものが多くみられる。同じように、西欧で芽吹いた近代資本主義は、急速に発展して今や世界を覆いつくすまでの経済システムとなっている。しかし、その「当たり前」の現実の奥にある「西欧近代の本質」に目が向けられることは、これまでほとんどなかった。本書は、この問題に対して「女性の消去」という視点から、「性の時代」ともいえる二十世紀後半期を起点として、性を資本の価値へと変換するその特異なプロセスを辿りながら、西欧の本質に迫ろうとする野心的な試みである。西欧的な世界秩序や資本主義のもたらす未来に陰りが見え始めているいま、その本質を改めて世に問う警世の書として、示唆に富む内容となっている。[目次]はじめに第一章 セックスの解放による女性の消去1 性の時代へのギヤシフト2 女の最大関心事はセックス3 生物学に還元されたセックス第二章 暴力の排除による女性の消去1 もうひとつの還元主義2 暴力を拒絶する女たち3 父権的暴力を模倣する官能の劇場4 抑圧からの解放か、発情しつづける欲望装置への組み込みか第三章 欲望の奪還がもたらす世界1 原始母権制への憧憬2 女性排除の起源3 フェミニズム・アートが演出する暴力と官能の世界第四章 視線の奪還がもたらす世界1 女性像と男性像の近代的矛盾2 女性的視線を剝奪するメカニズム3 男性的視線はどこから生まれたのか4 フェティッシュな女性美の誕生第五章 模倣の強制と世界の変容1 女性と非西欧を抑圧する構造2 模倣がもたらす権力の無効化3 母性的マゾヒズムによるファルスへの逆襲あとがき改訂版あとがき参考文献[出版社からのコメント]近代社会の成立にとって重要なファクターの1つとなった資本主義の本質という観点から見たとき、経済的な繁栄や社会の変革という現象は、また異なる相貌を見せることに気づきます。「当たり前」であるということは見ようとしないということであり、多くの人の「当たり前」は私たちの社会に大きなブラックボックスを生み出してしまっているのかも知れません。本書を通じて、多くの「当たり前」に目を向け知性の光をあてるきっかけを持っていただければ嬉しく思います。[著者プロフィール]越智 和弘(おち・かずひろ)1951年神奈川県横須賀市生まれ。東京外国語大学大学院修了。文学博士。現在、名古屋大学大学院名誉教授。専門はドイツ文学、西欧思想。著訳書 『女性を消去する文化』(鳥影社)、『非在の場を拓く―文学が紡ぐ科学の歴史』(共著、春風社)、『グローバル・コミュニケーション論』『ジェンダーを科学する』(以上共著、ナカニシヤ出版)、P・シュナイダー『壁を飛ぶ男』(白水社、共訳)、H・ベル『川の風景に立つ女たち』(同学社)、F・C・デリウス『モガディシオ窓際席』(河合文化教育研究所)、U・ハーン『女のいえに男がひとり』(同学社)、C・クラハト『ファーザーランド』(三修社)、T・ヘッチェ『夜(NOX)』(白水社)、M・クレーベルク『裸足』(三修社)、P・シュナイダー『父よ!』(鳥影社)。
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