D県警の三上義信は46歳にして20年ぶり2度目の広報室への人事異動をくらった。1度目のときは捨て鉢な態度で職務につき広報マン失格。1年で刑事に戻れたものの、人事異動へ怯えが精勤を支え、結果、刑事として確かな実績を作ってきた。だがしかし――。職能を見限られた気はしたものの、前のような愚はおかさず、警務部長の意向に沿うだけではない、広報室に改革に乗り出し、記者との歪な関係も解消されてきていた。そんな矢先、ひとり娘のあゆみが失踪した。全国への捜索手配を警務部の赤間に願い出た三上は、上司に服従するほかなくなったのだった。 変節をした三上が、記者クラブと加害者のやっかいな匿名問題で対立する中、警察庁長官による、時効まであと1年と少しの「64(ロクヨン)」視察が1週間後に決定した。64とは、たった7日間の昭和64年に発生した「翔子ちゃん誘拐殺人事件」を指す刑事部内での符丁だった。遺族の雨宮に長官慰問の件を知らせに行くとけんもほろろに断られる。なぜここまで雨宮と拗れたのか。雨宮を懐柔するための情報を得ようと、当時の捜査員など64関係者にあたるうち、刑事部と警務部の間に鉄のカーテンが引かれていることを知る。それには元捜査員が口を滑らした「幸田メモ」が関わっているらしい。警務部で「陰のエース」の名を恣にする三上の同期・二渡真治も幸田メモに関して動いていた。幸田メモの真相をつきとめ、警察庁長官の視察の新の目的をさぐるために動く三上の前に二渡が現れる。二渡は名将の誉れ高く、8年前に退官した尾坂部の家に入っていった。
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