ブラームスの創作の前半の頂点《ドイツ・レクイエム》は、聖書・古楽・民謡研究ほか、それまでの彼の多方面にわたる創作の成果が傾注されている。彼が若い時代から追求してきた「人の声」の思想の集大成でもあり、彼の深く考え抜かれた思想「死生観」が込められた、彼独自の宗教音楽でもある。 今日の私たちにも強い現実性をもって語りかける《ドイツ・レクイエム》は、現在でも演奏会のレパートリーとして親しまれている人気曲にもかかわらず、ブラームスは作品の草稿のほとんどを破棄したため、創作の背景がなかなか解明されなかった。 あの柔和で共感にあふれる音楽がなぜ書かれたのか。本書は、多角的な見地から《ドイツ・レクイエム》の創作の背景や、ブラームスの思想に迫る。
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