【まえがき】 平成3年に「富水試だより」にエッセイまがいのものを寄稿してから、はや12年の歳月が過ぎようとしている。長らく行政に携わっていた私は、それまでものらしいものを書いたことはなかった。だから、最初の寄稿では多くの人に読んでもらおうという意図はなく、ただ自分の思いを記しただけだった。それが、水試だよりを書いているうちに、「面白い」とか「読んでいます」と人に言われるようになり、それらの人の思いを受けて書き続けるようになった。そしてある時、全国内水面漁連から、広報「ないすいめん」に掲載したいが、と声をかけられ、一部を「田子の熱き思い」として8回に渡り連載していただいた。この連載に関しては好評?をいただいたように思っている。そして、連載を終わるに当たって、それまで書いたものを本にまとめてはどうかとお誘いを受けた。私としては分不相応ではないかとためらったが、少しでも私の思いと川の現状を記すことによって、世間にはこよなく川を愛する人々がいることを知っていただくと同時に、そのことによって川が少しでも良くなれば、という思いで本へのとりまとめを了解した次第である。 それぞれの章はそれで読み切りで書いたものなので、どこから、またどれを、もちろん最初から読んでいただいても結構である。章の順番に当たっては、時系列に並べた方が私の考え方や書き方の変化、あるいは川をとりまく状況の変化が分かるのではと思い、そのようにした。『庄川のサクラマス流し網漁を振り返って』~『内水面の漁法─アユのドブ釣り漁2』については、「ないすいめん」および「富水試だより」に掲載されたものの中から好みのもの選択し、それに加筆修正を加えたものである。『「アユの川」はいずこに』以降については、本稿出版に当たり新たに書きおろしたものである。 修正に当たっては水産あるいは生態学的に詳述した部分や水試の広報的な要素の多い部分は削除した。図表等も必要最低限のもの以外はすべて省略して、「読み物」としての性格に重点を置くようにした。 この本を読んでいただくことにより、アユ、サクラマス、川そして現場の研究者の置かれた現状を理解していただけるか、あるいは読者の皆さんの、仕事で疲れた神経がリフレッシュされ、ストレスのたまった精神が少しでも癒されるなら、望外の幸せです。 【あとがき】 本稿の原本ともなった「富水試だより」「ないすいめん」に寄稿した私の読み物については、いろいろな人から励ましの言葉をいただき、継続することができた。特に各県の水試仲間あるいは先輩方々にどれだけ励まされたことだろう。会議や出張で会う度に「田子さん、水試だより読みましたよ。面白いですね」「田子さん、ないすいめん、いつも読んでいます」「田子さん、ないすいめんに渓流釣りで誰かに見られているようなことを書いておられたけど、あれは僕も経験しています」「田子さん、富山には毛鉤釣りってあるんですね。いいですね。友釣りは大変そうだけど、毛鉤釣りなら俺にもできそうだな。それと最後の方は、ちょっとエロチックでしたね」などなど。気安く声をかけていただいた。また、県内の研究機関の方から頂く年賀状にも「水試だより楽しみにしています」「早く本にしたら」などが多くあり、止めるに止められない状況でもあった。現在の富山水試場長である鈴木さんにも赴任早々、「田子さんの水試だよりは面白いから本にでもしたら」というありがたいお言葉を頂戴している。 ところで、いろいろな人の講演や話を聞き、自分でも講演をするようになって気がついたことには、中には「口だけの人」がいるということであった。飲んだ時だけカッコイイことを言う。立派な肩書きがあって講演している人の話をよく聞くと、データや考え方が実は人の借り物だったりすることがある。中には著作権を侵害しているのでは、と思える人の講演も聞いたことがある。私のこのような駄文に近いエッセイを書くにあたっても、中味は駄文だが、そういう「口だけの人」とは一線を画したいということと、本文にも記したが、論文は魚たちへのレクイエム(鎮魂曲)と考えているので、巻末に私が書いた(ファーストネームで)論文の一覧を添付することとしたい。私の記述に疑問のある方、あるいは生態をもっと詳しく知りたいという方はそれらを読んでいただければ幸いである。 最後に第1回全国水産試験場の場長会の会長賞に私を選んでいただいた全国の場長さん方々、「○○賞も可能かも」と強い励ましの言葉をいただいた水研の人などを始め、各県の大学、水研、水試の方々、県内試験研究機関の方々、場内のアルバイトの方々、そして富山水試の職員の方々など、私の拙文を愛読して、私を支えていただいた多くの人々に、心から感謝の意を表したい。 また、本企画をしてくださり、出版に際して数々のご足労をおかけした全国内水面漁連の剱吉広報室長に深くお礼申し上げる。
人気のある作家
ニュートンプレス (39) 今泉忠明 (28) 科学教育研究協議会 (23) ナショナル ジオグラフィック (21) オーム社 (21) 齋藤 勝裕 (20) できるシリーズ編集部 (18) standards (18) 田邊 卓 (17) 日刊工業新聞社 (16) 中山 茂 (16) 青木 薫 (15) 群馬県立自然史博物館 (13) 岩合光昭 (13) (12) 稲垣 栄洋 (12) 結城 浩 (11) 科学雑誌Newton (11) ニュースダイジェスト社 (11) 川俣 晶 (10)最適なファイルサイズ
189 KB 188 KB 218 KB 101178 KB 10144 KB 10249 KB 102587 KB 10262 KB 10297 KB 103397 KB 103400 KB 10340 KB 1034 KB 104907 KB 105017 KB 105183 KB 105675 KB 10674 KB 1067 KB 107341 KB