特集:NeoSoul 2019 SNS時代を軽やかに生き抜く ネオソウル・ギターとは? 今月の特集テーマである“ネオソウル・ギター"とは、ここ最近、YouTubeやSNSなどネット界隈で見かけるようになった言葉である。試しに“Neo Soul Guitar"と検索してみてほしい。国内外を問わず、多くのギター演奏動画がヒットするはずだ。それらの多くはコードとメロディを1 本で表現するソロ・ギター、もしくはトラックをバックにソロをとっており、音色はクリーンが主体。やや複雑なコード・ヴォイシングを用い、ヒップホップやR&B由来のビート感という共通点も見受けられる。この手法自体はほかの楽器でも以前からあるだろうが、気づけばある固有のギター・スタイルを示す言葉になっているらしいのだ。一体、“ネオソウル・ギター"なるものはいつ生まれ、どんな音楽的背景をもつのか? そもそもネオソウルとはシンガー主体のR&B派生ジャンルでは? そんなギター界のトレンドに潜む謎を追うのが、本特集の大まかな主旨である。特集は大きく分けて2つ。前半部は先端シーンで活躍する若手ギタリストたちのインタビュー集で、彼らは本来的な“ネオソウル"の影響と発展という意味でも、避けて通れない存在だろう。トム・ミッシュ、アイザイア・シャーキー、スティーヴ・レイシーなど、新世代のスターである。おそらくSNS系ギタリストの目指す先であろう彼らは、この現象をどうとらえているのか? そして、後半部では冒頭に述べたネットの世界へ取材班がダイブ。YouTubeやインスタグラムなどを主戦場としたSNS系ギタリストたちに、一連のムーブメントの発端を聞いてみた。果たしてネオソウル・ギターは一過性のブームか? 新時代の幕開けか? 当事者たちの証言で構成する、現代エレキ・ギターの最新事情をとくとご覧あれ。 ■イントロダクション:そもそもネオソウル・ギターとは? ■New Generation Heroes 2019年、シーンの先端で躍進する ネオソウル界隈のギタリストたち。 ■Special Interview トム・ミッシュ SNSネオソウル時代の寵児 “SNS時代を軽やかに生き抜くネオソウル・ギターとは何か?"。本特集の表紙にもあるこの問いかけへの解答として、ひとつの理想形を体現しているのがトム・ミッシュだろう。むしろ彼がシーンに登場したからこそ本特集を実施するにいたった、と言っても過言ではないほどだ。1995年生まれのトム・ミッシュは単なるギタリストではなく、シンガー、バイオリニスト、ビートメイカー、さらにはプロデューサーでもある。にもかかわらず、多くの人が彼のことを新たなギター・ヒーローとして認識しつつあるのは、彼がインターネットでギター動画を投稿することからキャリアをスタートしたことと無関係ではないはずだ。現代におけるギターのあり方を提示してくれる彼に、1年ぶりとなるインタビューを行なっていこう。 スティーヴ・レイシー iPhoneからグラミー賞を生み出す男 生音でネオソウル・サウンドを作り出すジ・インターネットの一員であり、ギターのみならずプロデュースも担当するスティーヴ・レイシー。ジ・インターネット自体はレイシー加入後初のアルバム『Ego Death』(2015年)がグラミー賞にノミネートされたことで話題を呼んだが、レイシー個人が真に注目を集める契機となったのは、ケンドリック・ラマーの『DAMN.』(2017年)にプロデュースで関わったことだろう。しかもその楽曲「Pride」はなんとiPhoneとGarageBandで作ったもの。新時代の音楽制作手法に誰もが衝撃を受けた。以降も数々のプロデュース行ないつつ、今年は初のソロ・アルバム『Apollo XXI』をリリースするなど快進撃を続けるレイシー。そのみなぎる自信を彼の言葉から感じ取ってほしい。 アイザイア・シャーキー ゴスペル由来、ネオソウル・ギターの代表格 ギターにおける現代ネオソウル・シーンのキーマンとして頻繁に名があがるディアンジェロとジョン・メイヤーだが、なんとそのふたりのツアー・バンドに共通して参加するギタリストがいる。その名はアイザイア・シャーキー。ディアンジェロの名盤『Black Messiah 』(2014年)に参加したことで一躍トップ・ミュージシャンの仲間入りをした彼は、その後ロバート・グラスパー界隈でも重用され、現在はジョン・メイヤーとツアー中……と言えば、どれだけの重要人物かよくわかるだろう。事実、シーンのギタリストにはアイザイアからの影響を公言する人もかなり多い。今回はそんな彼へ本誌初となるインタビューを実施。さまざまな質問に真摯に応じてくれた彼の一言一句をぜひ見逃さないでほしい。 FKJ あらゆる楽器でビートを刻むマルチ奏者 ギターやベース、鍵盤、サックス、ドラム、歌、ビートメイク、さらにはミックスまでを自身で行ない、理想とするサウンドを追い求めるFKJ。自己完結型のミュージシャンが増えている現代において、彼は特に注目すべきアーティストだ。音楽性は幅広く、ソウルからR&B、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロまでをカバーするが、どの楽曲にも共通して漂うメロウで洗練された響きは、まさに現代のネオソウルとしてカテゴライズできるはず。そんな彼のルーツはギターであり、楽曲にも積極的にギター・サウンドを取り入れているのだが、ギターの本当に“おいしい"部分だけを抽出して配置する使い方はマルチ奏者ならではとも言える。ギターの魅力をどんな視点から見つめているのか、じっくりと聞いてみた。 マテウス・アサト 現代SNSシーンの旗手 インターネットでギターに関する情報や動画をチェックする人ならば、必ずどこかでマテウス・アサトの存在を知るだろう。名実ともに彼は現代のSNSシーンを代表するギタリストと言っていい。長髪にヒゲのワイルドなルックスから飛び出してくる繊細で美しいコード・ワークと、ブルージィで大胆なフレージング。メタルをルーツに持つ彼はフィジカル的なテクニックも相当なものであり、往年のギター・ヒーロー的な要素も感じさせてくれる。決して“ネオソウルど真ん中"のギタリストとは言い切れないが、プレイに漂うメロウなフィーリングにはその一端が感じられるのも確かだ。まだ自身名義の作品はゼロにも関わらず新世代のヒーローとして注目される彼に、現代はギタリストにとってどんな時代なのか聞いていきたい。 メラニー・フェイ ジャズ的ハーモニーが光る新進気鋭 若く優れた才能が突如として出現する現象はどの世界でも見られるが、SNSとの関係性が強いネオソウル・シーンではそれが顕著だ。1998年生まれのメラニー・フェイは、そんな新鋭ギタリストの中でも特に注目したいプレイヤーである。リーダー作はまだほとんどないが、YouTubeをチェックするとアイザイア・シャーキーとセッションしたり、フェンダーのオフィシャル・デモに起用されたりと、気になる存在であるのはたしか。いざプレイを聴いてみるとコードやフレージングにジャズのバックグラウンドを感じるが、そこにクリスピーな音色を組み合わせつつ、あくまでビート感を重視しているのが現代的だ。そのルーツを探るべく質問を投げかけると、ゲームから始まったという自身のキャリアを語り始めてくれた。 ■当事者の証言から探る、SNS時代のネオソウル 本来のネオソウルはあまりギターが目立つようなジャンルではない。そのため、ギター・ヒーローを生み出すのが難しいスタイルではある。が、SNSの登場により、普段裏方だったセッション・ミュージシャンたちやネオソウル好きのギタリストたちが個人で発信力を持つようになってきた。今まで情報の少なかった“ネオソウル・ギター"は注目を集め、SNSを中心に独自の進化を遂げたのだ。ここからはInstagramなどで人気を集めるギタリストたちの証言から、“ネオソウル・スタイル"の特徴や動画撮影のためのノウハウなどを探っていく。 ■動画連動:4小節ループで弾くネオソウル的ギター奏法 by 関口シンゴ ネットにアップされているネオソウル・ギターの動画は洗練されていてカッコいいけど、演奏は複雑だしコード進行も難しそう……と諦めてしまう人、多いのでは? 本コーナーではそんなギタリストのために、どんなコードをどう弾けばネオソウル系ギターが表現できるのか、4小節の短いループを中心に伝授していきたい。インストラクターを務めるのはギタリスト/プロデューサーとして活躍しつつ、自身も各SNSにネオソウル・ギター系の動画を多数投稿する関口シンゴ。すべての譜例はYouTubeのギタマガ・チャンネルの動画と連動しているので、そちらをチェックしつつ弾き進めることでネオソウル・ギターが習得できること間違いナシ! ■国内ミュージシャンに聞く、最新ネオソウル考 TENDRE Satoshi Anan(PAELLAS) 磯貝一樹 TAKU(韻シスト) 海外で盛り上がりを見せる10'sネオソウルの潮流はここ日本へも流れ着き、洗練されたサウンドに触発されたミュージシャンは多い。本コーナーでは、その影響を受けながら独自の表現を模索する4人に登場願い、各人のネオソウル考を聞く。 ■GM SELECTIONS(※電子版には収録されていません) ・「Sweet and Sour」Nulbarich ・「サマータイム」ジャニス・ジョプリン ■INTERVIEW & GEAR ・滝 善充×菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) ・KEEPON ・Shinji(シド) ■PICK UP ・トシ矢嶋×小山田圭吾 ・チバユウスケのシグネチャー・グレッチ爆誕! ・新世代のモジュラー・ペダル・システム ZOIAとは? ■THE AXIS' GEAR ・百々和宏&澄田健(TH eROCKERS) ■PROFESSIONAL GUITAR FILE eureka/夏bot/U-1(For Tracy Hyde) ■月刊 足下調査隊! AKUN(SPiCYSOL) ■アンプがないとね、音は出んのだよ 小野瀬雅生(クレイジーケンバンド) ■連載 ・俺のボス/加藤綾太(2) ・トシ矢嶋のLONDON RHAPSODY ・ジャキーン! ~『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』番外編 ・Opening Act:Gateballers ・9mm滝のまたやっちゃいました~世界の滝工房から ・横山健の続・Sweet Little Blues …「目次」に続く
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