「黄金よりも価値がありもす! ケシを研究したもんせ」“草"=諜報スパイに課せられた陸軍最高首脳の極秘指令十八歳で初対面の陸軍中将・上原勇作から「草を命ずる」と言われ、それを引き受けたときに吉薗周蔵の一生は定まった。周蔵はその日から永年にわたり、自筆の手記を認めてきた。そこには、上原付の陸軍特務として活動した周蔵の目を通して、大正・昭和の日本国家の動きが裏側からとらえられており、その内容には今日の歴史常識を大きく覆すものがある。平和国家となった戦後日本の常識では理解しがたいことが、その時期には日常行われていた。東京裁判史観とそれに基づく社会教育の結果、当時の世界状況と日本を取り巻く欧米列強・アジア諸国の実情から目を逸らされた戦後人は、その時代の祖国と父祖の実績をいたずらに悪意をもって見ようとしてきたが、我々の父祖は痴呆でもなく狂気でもなかった。ただ生を享けたこの国と、ここに住む家族を外国の奴隷にせぬために、あらゆる努力をしてきたのだ。それを実証するのが「吉薗周蔵手記」である。―アヘンは軍の勝敗を左右する重大な物質、そいも極秘物質である。現在は支那、朝鮮、インドなどを頼らなければならん。そいでは困る。よって、アヘンが支那・朝鮮に何ぼあっても、それは隣ン家が金持であって、あくまでもオイが家は貧乏というのと、同じである。支那・朝鮮が日本を欺いた時、アヘンは日本にはまったくのうなるのである。オイは他国頼りに何ぞやるは、性分に合いもっさん。自分の所で何でも賄うていけんかったらそいが負けの基になる。アヘンはどげんことしても、国内で大量に作りたか。そいも重要なんは極秘にやりたか。オマンができる限りでよかが頼みもす。こんこつだけは他の人にはよう頼めんのです―[上原勇作の言]
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