鐘ヶ淵の隠宅を焼失した秋山小兵衛は、若い女房・おはると共に、 橋場の料亭「不二楼」に仮住まい――。 幕府老中・田沼主殿頭(とのものかみ)意次(おきつぐ)も登場。 江戸の風物も鮮やかに活写した、国民的大ベストセラー、その第三巻! 若衆髷をときほぐし、裸身を湯槽に沈めた佐々木三冬に、突然襲いかかる無頼の浪人たち。しかし、全裸の若い女は悲鳴もあげず、迎え撃つかたちで飛びかかっていった。 隠された三百両をめぐる事件のさなか、男装の武芸者・三冬に芽ばえた秋山大治郎へのほのかな思いを描く表題作。香具師の元締のひとり娘と旗本の跡取りとの仲を小兵衛がとりもつ「嘘の皮」など全7編。シリーズ第3作。 【テレビドラマ化常連作品】 加藤剛・山形勲(1973年4月7日 - 9月1日) 中村又五郎・加藤剛(1982年12月3日 - 1983年3月4日) 藤田まこと・渡部篤郎、山口馬木也(1998年10月14日‐2010年2月5日) 北大路欣也・斎藤工(2012年8月24日、2013年12月27日) ※「佐々木三冬」役は、音無美紀子、新井春美、大路恵美、寺島しのぶが演じている。 【目次】 東海道・見付宿 赤い富士 陽炎の男 嘘の皮 兎と熊 婚礼の夜 深川十万坪 解説:常盤新平 本文より たじろぐ二人の男を突き飛ばすようにして、三冬が湯殿から走り出た。 一人は若い浪人。一人は見るからに無頼の中年男であったが、 「や、畜生め……」 あわてて、三冬の白い背中へ飛びついた無頼者が、台所の土間へ翻筋斗(もんどり)を打つように叩きつけられ、気絶してしまった。 「お、おのれ‼」 若い浪人が、せまい台所で腰をひねり、大刀を抜き打たんとするとき、ぱっとつけ入った佐々木三冬の右手が、刀の柄へかかった浪人の手を押えた。 「うぬ‼」(「陽炎の男」) 本書「解説」より 『陽炎の男』はとくにユーモアがあるようだ。全体に春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)とした感じがあって、一編一編をゆっくり読みすすみながら、「まんぞく、まんぞく」とつぶやきたくなってくる。この第三集も季節感があふれていることはいうをまたない。「東海道・見付宿」は「その朝、いかにも春めいた雨が降りけむっていた」し、棟梁、富次郎の手で隠宅の工事が順調にすすむ「赤い富士」では、「桜(はな)もほころびかけ、どんよりと生あたたかい曇り空の何処かで、しきりに都鳥が鳴いている」 ――常盤新平(作家) 池波正太郎(1923-1990) 東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠。
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