江戸時代の武家社会で最も権威のある存在――それが、征夷大将軍である。武士のトップに立つ将軍ともなれば、さぞ、自分の思うままに采配を振り、大勢を従えながら、人生を謳歌したのだろうと思うかもしれない。 しかし、現実の将軍はそんなイメージとはかけ離れている。上司の豊臣秀頼との付き合いに苦心する初代家康、強権すぎて幕臣が暴走を止められなかった5代綱吉、支持者に忖度しまくっていた8代吉宗など、将軍たちの素顔はかなり人間くさい。 そんな将軍たちの人間くさい面――将軍を取り巻く悩みや願望――に注目して、時代のターニングポイントを読み解くことが本書の目的である。好き放題振舞っているように見えた徳川将軍たちもまた、わずらわしい人間関係に頭を悩ませて、日々戦っていた。そうした人間関係が歴史の流れにどう影響したのか、本書では考えてみたい。
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