赤い傘が、ひとつ。大きな傘。やさしい傘だよ。雨が降ってきたら、みんなが入れる傘。背が高くても、けむくじゃらでも、足が何本でも、どんな姿をしていてもだいじょうぶ。入れないかも、なんて心配しなくていい。場所はいつでも、十分にあるんだから。傘という誰もが知っているものを使って、優しさや包容力が持つ素晴らしさことを表現した『おおきなかさ』は、シンプルだからこそ心に強く響く絵本です。 この本の主役である赤い傘は、優しくて、誰かを守る場所になることが好きなんです。困っている人のために、めいっぱい腕を広げてどんどん広がっていく大きな傘。その下に、雨から逃れていろいろな人や動物が入ってきます。でも表情や背格好はあまりよくわかりません。わからなくても、傘は躊躇なくみんなを受け入れていきます。そして最後に雨が止んで、輝くおひさまの光の下にみんなが出てきたとき、それぞれのなんと楽しそうなこと! ヒジャブをつけた人、車椅子の人、ゲイのカップル、手を繋いだ老夫婦に、さまざまな肌の色のこどもたち…… やっと顔の見えたみんなは、だれもが幸せそうです。どんなバックグラウンドの人なのかな?と、本を眺めながら話し合うのもいいですね。いつ傘にはいってきたのかな?と再びページをさかのぼって確かめる楽しみかたもできます。 最後のページには「どんなときも みんなのばしょがあるんだよ」というメッセージが添えられています。 多様性が求められる社会で、きっても切り離せない「他者を優しく受け入れる」ということ。その素晴らしさを考えるきっかけ作りとして、家庭で、教室で、大人同士で……さまざまなシーンで活用していただきたい本です。 著者は、数多くの作家に絵を提供してきたイラストレーターとその娘。二人が暴風雨の中、一緒に傘に入って登校した経験から生まれたお話です。雨が強ければ強いほど、大きな傘は心強く感じられるもの。雨の日にはこの絵本を読んで、誰かに優しくすることを想いながら、傘をさしませんか。
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