京都の街並みに残る、取り壊された家屋の痕跡。 古い家並みの残る京都にあっても、刻々と街は変容する。 京都在住の写真家・三宅章介は、日々、街を歩き、取り壊された家屋の痕跡に遭遇し、撮り続けてきた。 それは、隣接していた建物の外壁に刻印された、多くは切妻屋根の痕跡である。 家の輪郭を刻むもの、壁のトタンの表情を驚くほど変えるもの、なぜここに?と不思議な位置に窓が出現するもの。ひび割れ、煤けた色合い、周囲の看板など、ひとつとして同じものがない痕跡が、かつてそこに在った人々の営みや、建物と建物との関わりを窺わせる。 その痕跡は時の流れと共に風化し、そこに新たな建物が建造されると人々の視界から消える。やがて隣接していた壁も解体され、人々の記憶から跡形なく消え去る。 ベッヒャーの類型学(タイポロジー)へのオマージュを込めて集積された写真群は、街歩きの貴重な記録であるとともに、建築的観点からの発見や見ることの奥行きを呼び起こす。 寄稿:甲斐扶佐義(写真家、「八文字屋」店主)
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