1961年、日本の東大寺山古墳から、後漢の霊帝の「中平」年号の金象嵌鉄刀が出土しました。品質の高さと刻まれた銘文から、鉄刀は後漢の霊帝が周辺国に下賜したものです。霊帝末の同時期の日本では、女王卑弥呼が共立されて即位し、倭国大乱が終わった時期です。一方、中国の後漢書には霊帝末の「女王卑彌呼」の記録はありますが、鉄刀、金印に関する詳しい記録はありません。しかし同じ倭の奴国王の金印の先例(AD57)より、倭の邪馬台国の女王卑弥呼は後漢に朝貢したはずです。この矛盾は何故でしょうか。後漢の霊帝末の「中平」は、『黄巾の乱』、『袁術の宦官皆殺し』、『董卓の暴政』、そして洛陽・西安の宮中焼き払いが有名です。後漢は、ほぼ焦土化し完全に衰退します。そして三国時代(魏・呉・蜀)へ移行します。この混乱の中で、記録が焼失した可能性が高そうです。一方、『黄巾の乱』のスローガンは、「蒼天已死 黄天當辰」です。「蒼天は死んだので、黄天が達べきだ」と言うスローガンです。「黄天」と言うのはBC2000頃の中国伝説にある夏王朝・黄帝です。近年の中国発掘DNA調査で、BC2000頃に黄帝系の人口が爆発的に増えていることより、中国伝説は歴史的事実だと言われています。同じ中国伝説で「蒼天」側には『蚩尤』という武装した武人がいます。蒼天側の遺跡からは山東龍山文化の卵殻陶器も出土します。徐福が佐賀平野に連れてきた山東省の子供たちが邪馬台国・卑弥呼です。「徐福が連れて行った山東の卑弥呼=蚩尤=黄帝の宿敵」と、黄帝には映るようです。宿敵の復活を見て、武人の黄帝に完全にスイッチが入ります。これが、黄巾、袁術、董卓の突然の暴挙の引き金になっているようです。『後漢の正史の女王卑弥呼の文書記録』がどのような過程で焼失してしまったか。しかし本書は、黄巾・袁術・董卓の戦闘シーンではなく、実際に文書を記録していた書記官に主フォーカスをあてて、焼失過程を確認していきます。番外編ですが、今回の確認過程で少しだけ驚いたことがありました。登場人物には「記録抹消を主とする人」と「乱世で覇権を勝ち得るのが主で記録抹消は従である人」がいることに気付きました。「戦略戦術派」と「武闘派」にニュアンスが近いですが。そして、全く予想もしなかった人が「記録抹消を主とする人」であったことに気付き、最後に少し驚きました。
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