市井の中にある地蔵さまの数奇な歴史の記録。 140平米ほどの敷地を持つ、寛政4(1792)年建立の等身大の立派な地蔵尊だが、その来歴はこれまで明らかではなかった。 約40年かけての調査で、興味深いエピソードを交えながらの、地蔵さまとそれを取り巻く人々の歴史が綴られている。 例えば、昔この境内に「大くじらの墓があった」という伝承。寛政4年に道頓堀で見世物にまでなったという話が『摂陽奇観』という江戸時代の歴史書によって証明されたり。あるいは「境内に六人組のタヌキが住んでいた」など興味深いエピソードにこと欠かない。 極めつけは、もともと京都に建てられていたのだが、西宮の人がもらい受け、力自慢の者が一夜で担いで運んできたとの伝承。しかも開元は京都の「百万遍知恩寺」だったという話。 読み物としても十分楽しめる一冊といえる。 本書の特徴 町の地蔵の歴史を通して、西宮の郷土史の一端にもなり得ている。しかも興味深いエピソードが盛り込まれており、読み物としても秀逸。
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