ひとりの青年と その継母 40年の物語 僕は幼稚園の時、はしかにかかって病院に入院していました。20日間もいしき不明だったそうです。頭のけんさもしてもらいました。ことばがうまく言えなくて病気をしていました。(本文「こどものとき」より) 私と昇の暮らしは22年間程でしたが、その間、昇の存在は家族の重荷であり、気苦労が絶えませんでした。とはいえ、私自身「この子が居れへんかったらトットさん(夫・敏睦の愛称)とも結婚してへんかったな〜……神様の思し召しやなー」と幾度か思いました。母は母で昇の面倒をみてくれ、家事も助けてくれました。みんなが彼を憐れに思い、いとおしみ、悩みました。昇は何回も私に「おばあちゃんいつもひとり〜? なんでひとり〜? ともだちいてへんの〜?」と聞いて呉れるのでした。麻疹以前までは親の愛を存分に受け、2歳頃の可愛い弟にも恵まれて育ちましたので、根はとても優しくて賢いお子だったことが考えられました。母の教会での葬儀の時には座席から突然立ち上がり激しく泣きました。本人は又座りましたが、私は一瞬、胸を打たれました。(継母・山根久子「あとがき」より)
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