『夜と霧』『アンネの日記』に並ぶ古典的名著、 『アウシュヴィッツは終わらない』の改訂完全版。 強制収容所から生還した著者が、 人間の極限状態を克明に描き出す レーヴィがナチスのユダヤ人強制収容所から救出されたのは1945年1月27日。自宅に帰り着くとすぐに、彼は記憶を頼りに、本書の執筆にとりかかった。飢えと寒さ、不潔な寝床、病い、そして死にゆく人々……。過酷な強制収容所での生活が非常に緻密に、きめ細かく記されている。ものを考えることが死につながるほどの極限状態にあって、人間の魂がいかに破壊されていくのか。体験を書くという行為は、アウシュヴィッツで全面的に否定された自己の人間性を回復する作業でもあったのかもしれない。生還以来、その体験を証言してきたレーヴィの集大成的ともいえる古典的名著『アウシュヴィッツは終わらない』の改訂完全版。 暖かな家で 何ごともなく生きているきみたちよ 夕方、家に帰れば 熱い食事と友人の顔が見られるきみたちよ。 これが人間か、考えてほしい 泥にまみれて働き 平安を知らず パンのかけらを争い 他人がうなずくだけで死に追いやられるものが。 これが女か、考えてほしい 髪は刈られ、名はなく 思い出す力も失せ 目は虚ろ、体の芯は 冬の蛙のように冷えきっているものが。 考えてほしい、こうした事実があったことを。 これは命令だ。 心に刻んでいてほしい 家にいても、外に出ていても 目覚めていても、寝ていても。 そして子供たちに話してやってほしい。 さもなくば、家は壊れ 病が体を麻痺させ 子供たちは顔をそむけるだろう。 ――プリーモ・レーヴィ
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