最近学校教育現場で「active learning」という言葉を聞く機会が多くなった。文部科学省もこれからの教育方法として力を入れだしたようである。要するに、教師が中心になって講義をする「教え込み」の授業からの脱却を目指しているのだ。具体的には、生徒どうしでの討論やディベート、グループで協力して進める作業、調査学習、体験学習などが挙げられる。生徒が主体的に課題に取り組む形を通じて、何を教わったか、ではなく、何ができるようになったか、という観点で教育成果を評価できるようになる。説明すればかんたんに思えるが、実際の実現はかなりの困難を伴う。最も大きな問題は、指導者の意識の変化を醸成することの難しさにある。教師は保守的であり、自分が受けてきた教育方法をそのまま踏襲する人が多い。急に「教えない」「ITを使え」と言われても何をしてよいのかわからないのだ。巷にはactive learningに関する書物もかなり出回ってきているが、理論を解説するものが多く、具体的な実践を解説するものは少ない。それは著者が主に大学関係者であり学者が多いことも原因の一つである。Active learningを世に広めるためには、多くの小中高校の教師が「これならできそう」「ああ、こういうことか」と思う具体的な例が必要である。私は40年間にわたる教員生活の殆どをActive learningに注いできたと言っても過言ではない。自分の勤務校ではない小学校や中学校、高等学校での「出前授業」をはじめ、全国の教員研修会などで多くの講演もしてきた。NHKの「わくわく授業」にも出演した。日本の大学や海外の大学でも「新しい教育法」について講義をしてきた。10年間頑張ってきたが、それでもActive learningの精神を理解し、実践を開始した教員は、ほんの一握りであった。しかし、文部科学省が本気でやろうという気になった現在では、多くの教師が本気で取り組まねばならないという気持ちにはなって来たのではないでしょうか。私ももう70歳をすでに超えているので、昔のように日本中を飛び回って、模擬授業や講義、講演をする元気はなくなってきた。せめてこれまでの経験を文章にして、多くの人に読んで頂いて,Active learningの真髄を体感していただきたく、この本を書いた。私は評論家でも学者でもありません。ただの数学教育者です。つまり理論家ではないのですが実践については誰にも負けません。この本は40年にわたる教員生活の中で取り組んだ、Active learningの実践を克明に報告しています。これをお読みに待って、「私も挑戦してみよう」と思われる方が増えれば、日本の教育も少しは変化するでしょう。それを期待しています。
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