火坂雅志急逝による未完の大作を伊東潤が引き継いだ奇跡の歴史巨篇 「火坂さんと伊東さんの執筆魂が宿ったような迫真の出来。これを快挙といわずして何を快挙というのか」(文芸評論家:菊池仁氏) 「本作品には、日本の閉塞感を打ち破り、未来を切り開くためのメッセージに満ちている」(文芸評論家:末國善己氏) 早雲・氏綱・氏康・氏政・氏直の五代百年にわたる北条氏の興亡を描いた歴史巨編。 伊勢新九郎盛時(後の北条早雲)は今川家の内紛を取りまとめ、やがて伊豆・相模を平定する。 早雲を継いだ第2代・氏綱は武蔵・駿河にまで進出し、北条家の地歩を固めるが……。 早雲の生涯をつらぬいた思想の根幹は、 政敵にはいかなる謀略を用いることも辞さないが、自身に対しては禅僧のごとき厳しい節制を課し、 領国の民にはつねに誠実に接して噓のない政治をおこなうことにある。 遺訓の原文にも、 ――上下万民に対し、一言半句も虚言を申すべからず。 とある。 彼が理想としたのは「祿壽應穏」、すなわち領民の財も命も穏やかであるべしという思想である。 数ある戦国大名のなかで、これほど民政に心を砕き、民に慕われた男もあるまい。 その意味で、早雲は異色の武将といっていい。 (本文「第一部」より)
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