本書は大きく二つの部分から構成されています。題名の前半の『ベクトル・テンソル』は第1章から第6章で、後半の『物理学の基礎』は第7章から第12章で取り扱います。第1章から第5章までは第6章の準備として、ベクトル・テンソル解析の基礎事項を記述します。第1章はデカルト座標に基づくベクトル・テンソル解析です。ベクトル解析の基本演算であるドット積(スカラー積)、クロス積(ベクトル積)、テンソル積に加え、本書ではくさび積を導入します。第2章で取り上げる座標系は二次元と三次元の極座標、円柱座標、それに回転座標です。第3章はベクトル・テンソルの時間微分を、第4章はベクトル・テンソルの空間微分をそれぞれ考察します。第4章では勾配・発散・回転の各微分演算に加え、新たにくさび微分を導入し、ベクトル・テンソル解析の拡張を試みます。くさび微分は任意の次元に適用でき、第10章に示すように、これ無くしては電磁場テンソルとマクスウェル方程式に完全な四元表示を与えることはできません。第5章の主要なテーマはガウスの定理とストークスの定理ですが、これらはくさび微分表示が可能です。第6章は一般曲線座標系におけるベクトル・テンソル解析です。基底ベクトルとベクトル・テンソル成分に共変・反変を区別し、計量とクリストッフェル記号および共変微分を導入します。第7章は古典物理学の力学と流体力学を扱います。ニュートンの運動法則は幾何学的法則ですから、第二法則を運動量の式に置き換えると第一法則と齟齬をきたし、運動法則の修正が必要になります。流体力学では基礎方程式である連続の式、運動量の式、エネルギーの式に保存形式の表現を与えます。例題のケプラー運動は本書独自の解法です。第8章の弾性体論はベクトル・テンソル解析の典型的な適用例です。弾性体論では熱力学的解析が不可欠であり、エネルギー法のポテンシャルとはギブスの自由エネルギーであることを示します。第9章は力学の四元化です。ローレンツ変換の導出には世界間隔にガリレイ変換を施し、時空を直交化するという独自の方法を採用します。第10章では初めに電磁気学の基礎法則を概観し、マクスウェル方程式を導出します。四本の方程式から成るマクスウェル方程式を四元化すると二本の方程式に帰着されます。第11章では理想気体に限定して熱力学の基礎を概観した後、その制限をはずして一般化します。ファン・デル・ワールス気体とポリトロープ気体は非理想気体の典型例であり、熱力学で通常無視される運動と輻射の効果も考察します。最後の第12章は輻射の初歩です。比強度など輻射の基本量を導入した後、輻射輸送方程式とモーメント方程式を定式化し、さらに輻射に対する運動の効果を調べます。光のドップラー効果と光行差は四元運動量の波動的描像であり、コンプトン効果では古典力学的取り扱いが可能です。なお、第2版では索引と6.6.4節に「共変微分と曲率テンソル」を追加し、第3版では転置の上付き添え字tをベクトル・テンソルと行列の右に移し、数式の表記を見直しました。なお、印刷が思わしくなく印刷をやり直した結果、第4版となりました。
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