わたしは香川県東部の‟手袋の町‟で生まれ、親父の跡を継いで「手袋屋」をしてきたが、この半世紀のうちに、激戦を続けてきた二百数十社が、4分の1に淘汰されてしまった。人件費高騰のあおりを受ける労働集約型産業の宿命であったが、一方で冬場しか売れない季節商品という泣き所が、重くのしかかっていた。家業を継いだ後、小さな企業を世界に売り出す苦労を重ねたものの、季節商品からの脱皮は難問だった。それを解くには、アッと驚く新商品の開発しかない。苦心惨憺の末、身体を支える『スワニーバッグ』を編み出し、世界一小さく畳める車いす『スワニーミニ』を開発する。わたしが生後すぐに罹った小児麻痺という障害が、商品開発の原動力を与えてくれた。本書でそのドラマを明かそう。 のちに腎臓病を患い、苦しい断食療法に挑んで全快できた。その健康法も紹介したい。それと「国際語」を取り上げる。「エッ?」と思われるだろうが、若くからエスペラント推進運動に積極的にかかわってきた。お門違いの分野になぜ首を突っ込んだのか、英語化の流れを放っておくと世界はどうなってしまうのか、その核心に迫りたい。この本で、わたしは生来の身体障害をバネにして闘ってきた‟再生の物語‟を語ろう。後年「不遇であったからこそ幸せになれた」と、思えるようになるのだが、いつしか80歳になり、次第に細る命への執着が頭をもたげてきた。 人が自分について語るとき、つねに自慢話になるだろう。卑下したり失敗を語ったり、マイナス面を言うときでも、裏を返した自慢話であることが多い。自分の文章もその例に漏れない。清水の舞台から飛び降りる思いで、かっこうつけも妙な執着もせずに、素直に自分の経験を綴ろうと思う。
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