初めて纏められた東日本の天然砥石産地280ヶ所。 天然砥石の成因からの分類法。 叙述の底流にある縄文的な採取利用文化への憧憬など愛好家から専門家までたのしめる一冊。 今まで、好事家にまかされてきた砥石・硯石を、低温の熱水変質作用による鉱床ととらえて地質学的な分類法を提案し、調査現場での砥石鑑別法を紹介するなどに加えて、砥石の歴史や文献などの読み物を加えた第一部と、天然砥石産地を県別に整理して、それぞれの砥石産地の地質や来歴などを略述した事典的な第二部からなっている。 フィリピンやブータンなど、国内外で広域的に資源地質学を論じてきた著者が、関東・甲信越以北の東日本における砥石拾いの候補地や、新しい砥石産地になりそうな地域を予想するなどして、まとめあげた砥石・硯石の累代の鉱産誌ともいえる一冊である。 第二部の各所にある「伝統的小規模産業の再生」としての天然砥石の開発は、二酸化炭素CO2削減の運動と同じベクトルであり、採取して利用するという縄文文化の素朴な体現でもある。 身近な天然砥石産地を訪ねて、表紙写真のような拾った砥石で自分の包丁を研ぐことは、金銭に換算できない自分の資源開発であり、脱炭素にも寄与することになる。
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