「マザー ! 何してるの ! そんな事したら死んじゃうじゃないの ! 」私は 怒鳴って、とっさに母を床に突 き倒してしまったが、それを無視して、 あわてて父の口から薬を取り出した。私の手の平は、十五錠くらいの 紫,白、茶、緑とオレンジ色のベトベトした薬で一杯になった。 「ヒロコなんて地獄に行ってしまったらいい ! 一体あなたは何を考えて るの。折角早くダディーを治そうとしてるのに。あなたはビルを殺す気 なの? 」それは、私が言いたい台詞だった。口の中を調べて いると、 「沢山飲ませれば飲ますほど速く良くなるっての、常識じゃないの ! 」 と母は怒鳴り返した。私は背中がゾーッとした。(第4章からの抜粋) * 上の事件後、作者の義母は正式にアルツハイマーと診断された。寝た きりの夫の介護をしたがる痴呆症の妻。老夫婦が同時に患者になった場 合、まして一人が強度の認知症を患うと想定外の事が次々と起こる。悪 い介護人に、車を盗られたり、家を乗っ取られそうになったり、詐欺ま がいにも何度もあう。 男勝りの日本人の嫁が、問題に立ち向かって解 決してゆく話は痛快でもあるが、老人介護というものは、そういう嫁で さえ、疲れ果て消えてしまいたいと思うくらい大変なものである。本書 は波乱万丈の8 年間の愛と笑いと涙の記録である。
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