婚姻費用原則的強制負担の欺瞞: 立法趣旨と法的保護に値する利益について ダウンロード

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本の説明

【本書の最終更新:2020.11.21】目 次はじめに1 婚姻費用分担義務の趣旨について(1) 奥田義人氏による解釈(2) 牧野菊之助氏による解釈(3) 於保不二雄氏による解釈(4) 中川善之助氏による解釈(5) 柳原嘉一氏による解釈(6) 我妻榮氏による解釈(7) 石川利夫氏による解釈(8) 小まとめ2 婚姻費用分担義務に関する国の見解について3 婚姻費用分担義務の定義について4 別居して婚姻関係が破綻した夫婦を事実上の離婚状態としている最高裁判所の判断について5 婚姻費用の保護法益について6 婚姻費用の履行請求をするための効果意思について7 趣旨に反した婚姻費用分担請求を認めることの反社会性について8 民法における「婚姻中」や「夫婦」の定義について9 婚姻関係における権利義務の性質について10 婚姻費用と子の養育費について11 婚姻費用が現実に必要としている費用であることについて12 別居行為自体の有責性について13 婚姻費用と夫婦間の有責行為について14 婚姻費用と他の婚姻関係から生ずる義務の関連性について15 婚姻費用と離婚後扶養を類推適用しての別居後扶養について16 残念な裁判官らについてまとめ補足 婚姻費用(養育費)の支払いに関する感情労働について  夫婦が別居していると,コンピ地獄,兵糧攻めに苦しめられることがある。コンピは婚費,つまり婚姻費用の略であるが,コンピ地獄とは別居をしている配偶者から婚姻費用を請求され,その経済的負担で自らの生活もままならなくなることを意味している。兵糧攻めも同じで,婚姻費用の負担から別居や裁判手続きの継続が困難になり,自らに不利な条件であっても妥協せざるを得ない状況に追い込まれることをいう。 妻(夫)は実家に帰って経済的に何ら不自由はないのに,こちらは家や車のローンなども重なり,到底これまでどおりの生活を維持することは不可能になる。また,子どもを連れ去られていると子どもと暮らせなくなった苦しみも加わるが,妻(夫)が子どもを会わせなかったり,月に数時間程度しか会わせないこともあり,その理不尽さで更に苦しみを増大させながらも,子どもの養育費も婚姻費用の一部として払い続けることになる。  このような婚姻費用であっても,「法で決まってる義務なのだから負担するのは当然だ」という意見もあるだろう。 しかし,本当にそうだろうか。 裁判所は「婚姻から生ずる費用」(民法760条)を,「夫婦間における共同生活保持のための必要な費用」(大阪高等裁判所昭和44年5月23日家月22巻2号45頁)(裁判長裁判官 小石寿夫,裁判官 宮崎福二,舘忠彦)と定義している。 もっと新しいものであれば,「夫婦は,婚姻生活を維持するために必要な費用を相互に分担する義務がある」(東京高等裁判所平成29年11月2日D1-Law.com判例体系掲載)(裁判長裁判官 垣内正,裁判官 内堀宏達,小川理津子)といったものもある。これらに表現の違いはあっても,その本質的な意味に違いはない。つまり,夫婦で分担義務の対象となるのは「夫婦共同生活を維持するために必要な費用」である。 しかし,(前提として,婚姻費用を請求するほうが収入が無いか少ないことにする)たとえば妻が離婚の意志を固めて一方的に別居をして,実質的な夫婦共同生活が完全に消失している状態だとしよう。その状態で妻が夫に婚姻費用分担を請求した場合,それが上記の定義に該当する「夫婦共同生活を維持するために必要な費用」と言えるだろうか。別居をした側である妻は,婚姻生活の維持を望んでおらず,むしろ,婚姻生活を消失させるために別居をしているのだから,別居後の妻が請求しているのは,「一方的に別居をして,相手が経済的負担に耐えられずに離婚に応じるようになるか,破綻主義で離婚が認められるようになるまでの別居費用」 と言うべきものだろう。あるいは,「一方的に別居をして婚姻生活は破綻させるが離婚は先延ばしにして長期的な経済的搾取として受け取る費用」ということもあるかもしれない。 婚姻費用の定義からすれば,夫にこのような婚姻費用の定義に合致しない費用までも負担しなければならない義務はない。夫婦での分担義務の対象は,あくまで「夫婦共同生活を維持するために必要な費用」に限定されているのである。  また,最高裁判所は婚姻関係が破綻して以降の不貞行為(貞操義務違反)は法的責任を負わないとしている。その理由は,婚姻関係の破綻後は,婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益がないからである(最高裁判所平成8年3月26日民集第50巻4号993頁)(裁判長裁判官 可部恒雄,裁判官 園部逸夫,大野正男,千種秀夫,尾崎行信)。 これは婚姻費用も同じはずで,貞操義務も婚姻費用分担義務も,どちらも婚姻という身分関係によって生じる義務である(これらの義務は内縁関係でも準用されているで,厳密には法的な婚姻という身分関係のみで発生する義務とは言えないが,詳しくは5章で述べる)。婚姻関係によって生じる義務なのだから,それによる法的保護に値する利益も,婚姻関係によって生じたものとなる。それが何かといえば,貞操義務に関して最高裁判所が示している通り,「婚姻共同生活の平和の維持」が婚姻費用分担義務に関しても法的保護の対象である。 つまり,婚姻費用分担義務が法的保護の対象としている「婚姻共同生活の平和の維持」は,貞操義務と同様,婚姻関係の破綻によって存在しなくなるのだから,その状況において,婚姻費用分担によって保護すべき権利や利益は存在しなくなっている。 このような状況であっても婚姻費用を請求する妻は,夫とではなく,金との婚姻関係を続けたいだけだろう。  しかしながら,裁判所は上記の妻のような請求も容認するという法の適用を続けている。本書はそのような裁判所の判断に合理性があるのか,婚姻費用の立法趣旨や関連する判例との法的整合性を元に整理していく。 本書の指摘に反発を感じる場合もあるかもしれないが,本書での指摘は,多数の研究者の見解から導いたものや,これまでの裁判所の判断を元に同じように類推適用したものであり,その根拠も示している。また,本書での指摘の一部に反論したとしても,全てに合理的な反論ができなければ,結局は婚姻費用分担義務が認められない結論は変わらないことになる。冷静な反論であれば歓迎するが,感情的な反対のための反対になっていないかは,一度振り返ってもらいたい。  ところで,仮に本書を基礎とした主張をしても,裁判官が無視する,論点をすり替えてまともに答えていないといったことがあれば,裁判官の訴訟指揮権に何らかの制限を加えなければならない根拠となるので,筆者まで連絡してもらいたい。裁判官の独立は保障されなければならないが,それとは別問題として,裁判官の独裁や暴走を抑止するための措置は必要だろう。特に過去の判例をコピペするだけでは済まないような訴訟だと,当事者が主張している結果に重大な影響を与える争点について何ら判断を示さず,事実上,上級審に丸投げのようなものも見られる。それでは三審制の意味がないし,最高裁判所もそれを不問としているのなら,構造的な欠陥があるということになるだろう。個人的には,当事者との争点整理の義務化や,その争点に対して裁判官が判断を示すことの義務化などが必要ではないかと考えている。 ※本書で引用した判例の裁判官らは以下の通りである(順不同,敬称略)。小石寿夫,宮崎福二,舘忠彦,垣内正,内堀宏達,小川理津子,潮久郎,吉村俊一,澤田英雄,阿部正幸,横井健太郎,富張邦夫,長部謹吾,入江俊郎,松田二郎,岩田誠,大隈健一郎,色川幸太郎,村上朝一,岡原昌男,小川信雄,可部恒雄,園部逸夫,大野正男,千種秀夫,尾崎行信,小谷勝重,藤田八郎,河村大助,奥野健一,草鹿浅之介,城戸芳彦,毛利野富治郎,石田哲一,矢ヶ崎武勝,森綱郎,片岡安夫,小林克巳,河野清孝,庄司芳男,榎本光宏,佐藤明,杉本宏之,貝阿彌亮,横田尤孝,宮川光治,櫻井龍子,金築誠志,白木勇

著者 :宮﨑保成
ASIN :B08LVJVBVX
によって公開 :2020/10/25
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