特集 令和版 ディスカバー・ジャパン 高度経済成長がピークを迎えた1970年、JRグループの前身である日本国有鉄道は「ディスカバー・ジャパン」という旅行キャンペーンを打ち出した。キャッチフレーズは「美しい日本と私」だ。 64年の東京五輪を目指して整備された新幹線や高速道路、また輸送網の強化が進んだ在来線などを利用して、70年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)の会場には、日本全国から国民が押し寄せた。それまでの日本では、観光の大部分を団体旅行が占めていたが、大阪万博を契機に家族や友人などの少人数で旅行する個人旅行の概念が生まれた。 国鉄によるディスカバー・ジャパンのキャンペーンは、大阪万博終了後の旅客需要を確保するために行われたものだ。このキャンペーンに加え、日本交通公社(現JTB)、近畿日本ツーリスト、ANA、JALなどが移動手段と宿泊がセットになったパッケージツアーを発売し、さらに自家用車が普及したことで、昭和の日本国民の間にも個人旅行が広まっていった。 そして2020年、令和版の「ディスカバー・ジャパン」ともいえる「Go To トラベル事業」が政府主導で始まった。世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症で冷え込んだ日本の観光産業を支援するのが目的だ。 「Go To トラベル事業は需要喚起に役立っている」とホテルや旅行代理店などの関係者は口をそろえる。だが、当然ながらGo To トラベルだけに需要喚起を依存しているわけではなく、各社、感染症対策と観光を両立できる新しい旅を提案している。例えば、居住地から1〜2時間で行ける少人数での旅行「マイクロツーリズム」やオンラインで旅行気分を味わえる「オンライン観光」。さらにはコロナ禍で定着しつつあるリモートワークと休暇を掛け合わせた「ワーケーション」など。 ウィズコロナの時代でも旅行はできる。今回はコロナショックと格闘している観光業界の特集です。
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