「精神科は分かりにくい」と耳にすることがあるが,はたしてそれは本当だろうか。本書,『精神診療プラチナマニュアル』は,さまざまな精神障害に対して精神科で行われている診断や治療を,簡潔かつ具体的に書き上げることに努めたものである。それでもまだ分かりづらい点が残っているようであれば筆者の力不足ということになるが,この本を手にした読者に「ああ,そういうことか」と少しでも何かを分かりやすく伝えられたとすれば幸いである。 もちろん,分かりやすさだけでなく,臨床の現場で必要とされる十分な内容を盛り込んだつもりであり,個人的な経験に頼った記載を控え,各種ガイドラインや論文,専門書などに基づく,より正しい情報の記載を心がけた。 本書は『感染症プラチナマニュアル』に続いて企画されたものである。『感染症プラチナマニュアル』の内容は臨床を強く意識したものであり,ポケットに(それも胸ポケットに! )収まるそのサイズにもその姿勢が強く打ち出されており,本書の趣旨と完全に合致したものであった。この『精神診療プラチナマニュアル』も,すべては臨床に活かしてもらうことを念頭に書きあげた。 読者として広い対象を想定した。筆者や編集者が,精神科医,精神科以外の医師,看護師,薬剤師,初期研修医,医学生にインタビューを重ねてきた。執筆途中のものを病棟で研修生にも活用してもらい,その有用性を確かめつつ書き進めてきた。まず,精神科をまったく専門にしていない内科医などの医師が手にしても役立つよう,薬物治療の内容はできるだけ具体的なものにした。精神科を研修する初期研修医には,上級医の治療を理解し自らプランを立てられるよう,そして,そのまま書き写せばカルテが書けるような一文を散りばめ,研修期間に精神医学のエッセンスを習得できるものにした。精神科に関わるナース・PSWなどのコメディカル,臨床に関わる心理士には,病棟や外来で行われている治療の理解を助ける内容とした。医学生が手にすれば精神科実習で学べることも多いだろう。そして,精神科医が手にしても十分に価値ある内容を盛り込んだつもりである。 筆者の意図が成功しているかは,まさに今,この本を手にしている皆様が臨床現場に本書を持ち込んだときに初めて分かることであろう。この一冊が,さまざまな職種の皆様がそれぞれの立場で精神医療をより良いものとする一助となることを,そして,それを通して精神障害に苦しむ数多くの患者が救われることを心から願っている。 2018年2月 松崎 朝樹
人気のある作家
メディカ出版 (137) 医学書院 (72) 医療情報科学研究所 (48) 医歯薬出版 (39) 坂井 建雄 (24) (19) 画像診断実行編集委員会 (19) 『精神科看護』編集委員会 (18) 高久 史麿 (18) のまり (17) 日本医療企画 (16) 医学通信社 (16) American Heart Association(AHA:アメリカ心臓協会) (12) 岡 秀昭 (12) DES歯学教育スクール (11) 森田 達也 (11) 福井次矢 (10) 谷口 総志 (10) 「腎と透析」編集委員会 (9) 「消化器内視鏡」編集委員会 (9)