ダウンロード キャリア・ダイナミクスⅡ 改訂版 本

私たちが最初にシアトルで日本人向けのエドガー H. シャイン・ワークショップを開催した際、ある参加者から、このような質問がなされた。「40代半ばで左遷され、自分のキャリア・アンカーと合わない仕事しかあてがわれず、絶望しているクライエントがいるのだが、どうしたら良いか」。これに対し、シャインは「そのクライエントは、キャリア・アンカーと新しい仕事のマッチングに悩んでいるのではなく、企業という依存先を失い対症喪失に陥っているか、または待遇が極端に下がって生活を維持できなくなることに絶望しているのだ。新卒一括採用で終身雇用であった多くの日本人には、壮年期前期までのキャリア・アンカーの形成は困難だ。同質的社会の中にいる日本人には、キャリア・アンカーのような外的キャリア形成を理解するのは難しいのかもしれない」と答えた。私たち日本人参加者はそのコメントに非常に驚き、シャインの言葉の真意を考え始めた。本書は、その後、シャインとのセッションを重ねていく中で、シャイン理論の本質的な理解を深めるための成果としてまとめた『キャリア・ダイナミクスⅡ』（亀田ブックサービス）の改訂版として、従来触れられなかった、9番目のキャリア・アンカー（多様性：プロティアン・キャリア）、中年期・更年期のキャリア・ディベロップメント、中小企業におけるキャリア・マネジメント、キャリア・サバイバルのやり方といった、未解決の課題に触れています。またＥ・Ｈ・エリクソンの漸成説だけでなく、多重知能説やハイパー・エクステンションといった新しい発達理論にも触れ、ソーシャル・リプレイスメントに言及している。