木頭村を知っていますか・・・?ロシナンテ社 四方 哲 ダム建設を止めた村がありました。四国山地に抱かれる木頭村(現那賀町)です。国が計画するともう止まりません。そんな難題をクリアした小さな村が木頭村でした。二〇〇〇年のことです。 村民のリーダーとして頑張ったのがこの本の書き手、藤田恵さんです。生まれも育ちも木頭村。戦争を挟んで中学校まで山の中で暮らしました。三歳の時に親戚へ養子に出され、小さいころから農作業、山仕事を手伝っていました。 一度、出かけてみてください。徳島県なんですけど、一番近い都会は高知の土佐山田。そこから車で一時間はかかります。曲がりくねった道をどんどんどんどん、四国山地の奥へ入っていくんです。深い谷があります。川が流れています。この辺りは昔から林業が盛んでした。植林されたスギが山をおおっています。ブナ林などの自然林も残っています。そして村を流れる那賀川川周辺に役場などの中心街が形作られています。 藤田さん、子どものころ、兄弟や近くの子どもたちと山や川でいろんな遊びをしたそうです。山鳥をわなで獲ったり、川魚を捕まえたりしたそうです。そして暑さ寒さも関係なく続く、農作業と山仕事。そんな記録を「月刊むすぶ」(ロシナンテ社発行)に書き綴ってきました。 それらをまとめたのがこの本です。私たち日本人の原点がここにはあったんだ。自然に生かされてきた日本人。決して自然を抑え込むんじゃなくて、自然の恵みをいただきながら生かされてきたという実感が藤田さんの言葉からは伝わってきます。 藤田さんは一九三九年生まれです。お兄さんは徴兵されています。四国山地の奥深くまで戦争はやってきました。戦争は本当に津々浦々に押し寄せていたんです。 そして高校進学で村を離れます。電電公社に就職します。若いころは、熱心に労働運動にも参加します。 やがて木頭村にダム建設計画が持ち上がります。何とかダム建設をやめさせようと考え、その運動のリーダーとして、一九九三年、藤田さんは村長になります。ダム計画は二〇〇〇年に撤回されます。この事実は、日本の行政史上、本当にすごいことなんです。これまで動き出した公共事業のダム建設を中止にさせるなんてあり得ないことでした。 そんな藤田さんの昔語りとダム問題についてまとめた本です。
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