近年、作業療法士(OT)が現場で作業を使わなくなったという声を聞く。このような時代には、改めて作業を用いる療法が発展してきた歴史を振り返ることが大切である。作業的存在として対象者を見ることの意義を再考する必要がある。作業から人の健康のあり方を捉え直し、対象者の生活への意欲を引き出すうえでも彼らが挑戦する機会を損なうことのないようにしたい。そこでは、OTと対象者の関係性はより重要となる。作業について語り合い、OT仲間で一緒に読み進めて、対象者と作業を実践する際の参考になるMOOK本があるとよいと考え、本書の企画となった。 まず、作業と作業療法の基本的な考え方、知識を多角的に検証している。そして、実践面で、作業のもつ力を作業療法に応用しているさまざまな場面を紹介する。翻って、その土台となる教育はどう教えられているのかを、方法論を含めて振り返る。最後に、当事者が回復するうえで作業がどのように役立ったかについて、インタビューを通して探っていく。 本書は、「作業療法は作業のもつ力を最大限に活かす」という命題を見事に一冊にまとめている。
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