「真の地方振興とは、風土を基調とする産業を興すことである。」風土は大自然そのものである。自然に善、悪はない。それを善とするのも、悪とするのも、それはわれわれ人類の心がけだけのものである。その風土の力をいかに発見し、いかに生活のなかに産業のなかに織り込むべきか、すなわち、風土を基調に産業を構成していくか、解き明かす。まえがき地方振興は風土産業の振興を中心におくはじめに風土を究明し産業と生活に織り込む第一章 風土とは何か 一、風土とは大地と大気の接触面 二、風土の生成 ① 大気が均一で地形に変化がある場合 ② 大地がほぼ同一で大気に変化がある場合 ③ 実際に近い場合 ④ 地被の影響 ⑤ 土壌の影響 三、風土の表現体は土壌、植生、動物、人類の四つ 四、風土は大地、大気、生物の三位一体的なもの第二章 風土性の究明―指針植物による判定法 一、指針植物 ① 北海道の例 ② 吉野地方の例 ③ 湯浅辰彦氏の土壌肥痩鑑別法 ④ 村岡硯市氏の野生草木肥痩鑑別法 ⑤ 耐寒性による樹種の分類 ⑥ たねの萌芽力の強いもの 二、土壌反応 三、植物の種類の変化第三章 風土の活用―風土の力を生かす 一、自然に善悪はない 二、低温の活用 ① 穂高のワサビ ② 諏訪の寒天 三、雪の活用 ① 信濃川沿岸のチューリップ ② 山形のラミー ③ 秋田、山形のアケビのつる細工 ④ 日本アルプスのウトウブキ ⑤ 山形の雪菜、雪萌やし ⑥ 信州積雪地帯の漬菜、雪納豆 ⑦ 飯山盆地の製紙業 四、冷水の活用 ① 柏原の鎌 ② 鯖江の鍛冶工業 ③ 土用のホウレン草 五、低温利用の産業 ① 北ドイツ平原のジャガイモとテンサイ ② 菅平高原のジャガイモ ③ 軽井沢の工業 ④ 佐久高原のフリージア、ウメの花 ⑤ 信州のマツタケ、リンゴ、早つけダイコン ⑥ 下久堅村南原のムギ ⑦ 中沢の凍み染 六、風の活用 ① 民家 ② 蚕種製造適地 ③ ウルシの防風林 ④ ササゲの適地 七、養蚕の風土 ① 夏秋蚕の飼育の適否 ② 場所のちがいで風土は変わる ③ 風道の観察が大切 ④ 風通しと日覆の注意と工夫 八、自然に無用無駄なものはない 九、風土の取り入れ ① 野沢平のコイの養殖 ② 湧き水利用のウナギ養殖の失敗 十、根本思想は利得よりものを生かすこと第四章 風土性の観察要諦―風土計 一、風土性は地方的、局所的 二、卓越風を知る 三、卓越風指標植物 ① 山の木、里のカキの木の傾き ② ヨシ、 アカマツの緑の傾き ③ 霧氷 四、空中湿度指標植物 ① スギゴケ ② サルオガセ ③ ノキシノブ ④ スギの樹皮 五、気温を測る ① 寒暖計を置く場所 ② 気温と体感温度のちがい 六、農業経営の適期 ヒガンザクラの開花期 七、気候の長期予測 中国大陸の春の気候で日本の夏の気候を予測 八、自然の動きと農事作業の適期 ① ヤマザクラの開花期 ② 代かき馬 ③ カエル、ハエ、セミ、ケムシの動き 九、万物は風土の現れ ① ウシやウマの季節の感性 ② 風土の表現体第五章 地方振興の真髄―風土の真相を究め災害防止を図る 一、真の地方振興は、風土を基調とする産業を興すこと 二、風土には短所も害悪もない 三、自然現象の真相を究め災害防止の途を開く ① 霜害気流の観察 ② 霜害防止の実践第六章 地方振興の将来性―個性化、特色化時代の産業計画 一、市場生産時代の産業計画 二、有価値・無価格のものを産業経営に織り込む 三、清澄な空気を生かしたスイスの時計製造 四、下大岡の鉢屋ガキ 五、カリフォルニアのリンゴ 六、産業計画は時代性を考慮し、風土との調和が大切第七章 風土産業の選択―風土に調和した産業の発見 一、巨木大樹による適地の発見 二、年ごとによる豊凶調べ 三、特異現象の調査 ① カキの隔年結果 ② クリ、クルミの隔年結果 ③ 穀物の隔年結果 ④ 苗代田の経営 四、風土の人工補充のあり方 ① 善光寺平のコメ、ムギの二毛作 ② 犀川丘陵地のタバコ栽培 五、風土にそくする生産物こそ個性化、特色化時代に強み 六、一木一石までも生かす ① 小石利用のブドウ栽培 ② 信州熊野沢のサツマイモの石垣栽培 ③ 信州佐久高原三岡村の小石利用のナス栽培 七、多方面にある風土産業の可能性第八章 風土産業の完成―風土産業の発展策 一、とくにその地域によく育つ動物、植物を発見する 山菜、山果の生産 二、 新品種の育成 ① ミチューリンの新品種育成 ② 長野市郊外のシロウリ ③ 南佐久切原村のダイコンの改良 三、作物の生態学的研究と品種改良 適切な品種改良が土地利用を高める 四、新品種の移入と輸入 五、真の地方振興の実現はその地方の人の一致協力、常住不断の努力から ① イネの無芒愛国の栽培 ② 信濃川下流の草花栽培 ③ 久能山のイチゴの石垣栽培 ④ 人絹糸の開発はカイコの観察から ⑤ 松尾村の凍豆腐の製造第九章 風土産業の強化―連環式経営のすすめ 一、北ドイツのテンサイ、ジャガイモの栽培とブタの飼育の連環式経営 二、大自然の理法にそくする連環式経営 三、生態系における循環と工場生産の本質 四、太陽エネルギーを固定する緑化が風土産業の根底 五、動物と植物の組み合わせが大自然の根本形態 六、連環式経営の展開 信州横川の凍み豆腐造り 七、廃棄物ゼロの経営 八、連環式経営の積極導入第十章 結びーこれからの産業のあり方 風土産業のすすめあとがき
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