本書の特徴は,物質を構成する「素」の素を追求したい若い人達が,自然界の基礎にある階層性の探求がミクロ世界の基礎構造の解明へと展開していく現代素粒子物理学の流れの中へ,自然な構成を通して導かれるよう工夫されていることである。基礎となる電磁気学,相対性理論,量子理論の主要な骨格が前半で導入され,後半の主テーマである素粒子構造の追及への実験・理論の取り組みと,クォークを基とする美しい対称性がどのように探究され,構成されるかを有機的な展開で示される。必要な範囲の数学処方が丁寧に説明され,随所に著者長年の教育工夫が反映されている。読本という読みやすい形で素粒子物理学の世界を見通すことのできる本書は研究を志す人達のみならず,この世界の概観を知りたい多くの人達に大きなガイド役となるに違いない。[著者]樋口 正人(ひぐち まさと)1940年(昭和15年),宮城県に生まれる。1965年,東北大学大学院理学研究科原子核理学専攻修士課程修了。東北大学理学部助手を経て,1967年より東北学院大学工学部に勤務。1986年,東北大学から理学博士号の称号を授与される。1988年より東北学院大学工学部教授。その後,東北理工専門学校理事,高エネルギー加速器研究機構客員教授を兼任。長年,一貫して理論・実験の両面から素粒子物理学の研究に尽力,特に泡箱素粒子飛跡写真の解析プログラム構築等にも寄与,また教育を通して学生の素粒子・高エネルギー物理学への関心や研究意欲を高め,若手研究者や技術者の裾野を広げることに力を注いだ。2007年東北学院大学を定年退職。東北学院大学名誉教授。2019年6月没。
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