発掘すべきか否か? 古代のタイムカプセル 古墳は、その大部分がのちに掘り返され、埋葬品の多くが持ち出されています。それを「盗掘」といいます。しかし、数年に一度、盗掘されていない古墳が見つかることがあります。それが「未盗掘古墳」です。未盗掘古墳は、つくられた時の状況がそのまま保たれています。そのため、そこに葬られた人物や葬った人びと、一緒に葬られた品々、葬る方法や技術、そしてそれを生み出した社会などについての豊かな手がかり(情報)を、万全の形で入手することができます。この本は、そのような未盗掘古墳の説明に始まり、著者が発掘に関わった滋賀県の雪野山古墳と岡山県の勝負砂古墳という二つの未盗掘古墳について、発掘の経緯や発掘によって分かったことを紹介します。そこから得られる情報量は、盗掘されている古墳と比べてはるかに膨大なのです。このように古墳の発掘は、古代社会を知るのに可欠な営みですが、近年では「より技術が発達しているであろう未来の考古学に託すため」という名目から、古墳を発掘しない傾向が強まっています。それに対して著者は、「掘れない古墳」の代名詞である天皇陵古墳の問題も挙げて、古墳を発掘することの学問的・社会的意義を論じます。 【編集担当からのおすすめ情報】 著者の松木先生は、数年に一度しか発見されない未盗掘古墳をこれまでに二度も発掘しています。未盗掘古墳のことを誰よりも知る考古学者だからこそ書ける、「未盗掘古墳の魅力」が満載です。
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