芥川賞史上最高傑作とも言われる、天才作家・森敦の名作古来、支社の行く「あの世の山」とされた月山。「わたし」は、「この世」と隔絶されたような、雪深い山間の破れ寺でひと冬を過す。そこには、現世とも幽界ともさだかならぬ村人たちの不思議な世界が広がっていた。誰しも作者というものは、容易に語るに至らぬものを奥深く秘めているものである。そしていよいよ重い筆を執りあげてから作者もまたようやく自分の中の具体的な秘密の存在を知りはじめるものである。森さんの場合も、当初に計画されていたものと長さも違えば、ことによっては語り方もいくぶん違う結果になったようである。そういうことも、どの作者にも大体のところ、共通するものである。(解説・小島信夫)
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