育児・教育・家事・介護が商品化された現代。作者の子供時代には『三世代家族』という単位が、当たり前のように人々の人生の中心を形成していた。そこには、二世代に看取られながら寿命を全うする老後が有り、残された伴侶も、二世代に支えられながら余生を終えた。しかしそこには、個人の権利よりも義務を重んずる家族制度という制約や、それに付随した労役や我慢や苦労があった。その我慢や苦労を『厭わしきこと』として核家族化が進み、家族の単位がミニマム化し、家族的労役は商品化され、『厭わしきこと』は解消されたかに見える。しかし、商品化された厭わしきことを購入するために人々は、自分の時間と労力を見も知らず、絆も持たぬ他人のために使用せねばならなくなった。そのためにいくつかのことが失われた。その失われたことのなかのひとつが『絆』であった様に思う。今作品は、離れた土地に暮らす二人の寡婦が、俳句を通して絆を結ぶ、細やかな日常が描かれている。
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