【概要】この作品は2020年春に亡くなった旧友を追悼して、モダンジャズに明け暮れた著者とその旧友の高校時代を描いた自伝的青春グラフィティである。【あらすじ】 札幌オリンピックが開かれた1972年、札幌市の東隣の江別市に住む主人公の柏木涼は全道屈指の名門校である札幌城南高校へと進学する。名門進学校に合格したものの、元々は臆病な小心者、周囲に誰一人知り合いもいない環境の中、孤独感に苛まれながら最初の一学期を過ごしていた。昔から音楽が大好きでピアノも弾いた柏木は、夏休みが明け高校生活に少し慣れ始めた頃ジャズ研に参加し、後の親友となる甲斐と出会い共にモダン・ジャズの演奏に挑戦していく。 高校二年に進級した柏木はクラス替えで同級生となった片瀬まりあに恋心を抱く。彼女は校内のマドンナだった。文化祭で柏木と甲斐の所属するジャズ研は初のコンサートを開き、時を同じくして柏木は彼女に告白する。こうして柏木の高校生活はモダン・ジャズと恋を両輪としてダイナミックに展開していく。 柏木とまりあの二人は徐々にその親密さを深めていくが、冬になりスキーのシーズンがくるとスキー選手のまりあとの間に距離が生まれ、二人の関係はぎくしゃくし始める。高校三年の春を迎え、甲斐の仲介で二人はお互いにもう一度素直な気持ちを告白し、改めて交際を続けることになる。ジャズ研ではレコード制作の企画が持ち上がり、レコーディング・ライブを開催するなどその活動は加速度的に展開していく。柏木とまりあの交際も順調に進み、柏木の高校生活は入学当初からは想像できないほど豊かなものとなっていく。 高校三年の秋、まりあはスチュワーデスの採用試験に合格する。柏木は東帝大を目指すが実力不足。浪人を覚悟した上で彼女との将来を真剣に考え始める。一方ジャズ研ではレコード化にトラブル発生。柏木と甲斐は実現に向かって奔走するが最終的に決着したのは一月も半ば過ぎ。満足な受験勉強もせずバタバタと受験した東帝大は当然の結果の不合格。柏木は京洛大に志望を変更し京都の予備校で浪人生活を送ることを決める。時間に追われバタバタの中卒業式を迎えるも、まりあと話をすることもできぬまま高校生活は終了する。 翌日京都へと向かう途上の羽田空港で柏木は偶然まりあと遭遇する。二人は期せずして同じ飛行機に乗り合わせていたのだった。二人の運命を感じた柏木だったが、まりあのとった行動は意外なものだった・・・。
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