本書は、語りの視点と心理の表現を精錬し、小説を芸術の域に高めた文豪、ヘンリー・ジェイムズの遺作 The Outcry の邦訳である。複雑な気質を持つ誇り高いイギリスの大貴族セイン卿や、彼の個性的な娘たち、そして美術評論家として名をあげる野心に燃える若者ヒューや、セイン卿の恋人サンドゲイト夫人の思惑が、セイン卿所蔵の絵画の売買をめぐって密かに激しくぶつかりあう。ヒューは、セイン卿の娘グレイスを狙うジョン卿と、セイン卿の家宝を狙うアメリカ人大富豪ベンダーの動きを阻止し、グレイスとの恋を成就すべく奔走するのだが・・・。 ジェイムズ得意の、愛と金と美術テイストが複雑に絡んだスリリングな人間模様が、そこはかとないユーモアをまじえた作者最晩年の新境地で展開する。 ジェイムズにしてはスピード感のある会話で進む本作は、もともと劇の脚本として書かれもので、アメリカ人富豪の美術品買い付けやナショナル・ギャラリーの動き、階級社会の変化など、同時代の観客にうったえるリアルタイムの動きをたっぷり盛り込んでいた。しかし国王エドワード崩御に伴い劇場が閉鎖されたため、翌1911年、小説に仕立て直して出版されたのである。すると出版直後から、しばらく低迷していた作者自身が当惑するほどの高評価を得たのだが、『ある婦人の肖像』『鳩の翼』『黄金の盃』『ネジの回転』など、ジェイムズの圧倒的な作品群の陰に埋もれて今に至っている。 初の邦訳でよみがえるジェイムズ晩年の世界を、存分にお楽しみください。
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