昭和21年(1946年)終戦の翌年、夏の日、三河湾の海辺の村で、ひとりの少女に逢った——当時の風俗とともに、哀切の初恋を描いた感動の長編小説。国民学校六年生の昭人。戦死した父の故郷は、愛知県三河湾に面する海辺の小さな村である。水田のために灌漑用の巨大な風車が二百基あまり林立し、ゆっくり回っていた。これほどの風車が集まった場所は日本国内では数えるほどしかない。またこの村では、若い男を百人以上、戦争で亡くしていた。母とともに亡父の故郷を訪ねた昭人は、都会育ちのおとなしい少年だ。父の実家は大家族の稲作農家で、男尊女卑、家長の祖父が囲炉裏端にどっしり構えている。夏休みだった。漁師の息子・釜之助らと遊ぶうちに、昭人は、やはり戦争で父を亡くした少女、美那子と出会う。美那子は活発で、表情も気分もくるくる変わる不思議な魅力を持つが、どこか暗い影がある。他の女の子はモンペ姿なのに、彼女だけはアッパッパを着ている。美那子の母は夫と激しい恋をし、遠くから嫁いで来たという。「どこの馬の骨ともわからない女の娘とつきあうな」と昭人の伯母たちは言う。厳しく優しい家長の祖父、悲しみから立ち直れない母、逞しく腕白な釜之助らに囲まれ、幻のような夏のなか、日に日に美那子に惹かれていく昭人だが……。ある日、美那子が昭人に囁いた。「あした、ね、夕方、風車の下に、来て。……わたし、行く」しかしその晩、悲劇が起きた。当時の三河湾の村の自然と風俗を小唄や方言を交えてじっくり描く。生涯忘れられない、哀切の長編初恋物語。目次海辺の村美那子歳月
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