この年になって、このような嘆き、哀しみが待ち受けていようとは……。 昭和四十七年から十八年間にわたって書き続けられた、国民的大ベストセラーも最終話。 しかしこの後、「小兵衛は九十三歳まで生きて」と本書では明かしている! 小兵衛は今も時折、二十六年前、門弟・滝の仇討ちに立会った際の、相手方の助太刀・山崎との死闘を思い出す。「生きていれば名ある剣客になっていたろうに」。そんなある日、蕎麦屋で見かけた崩れた風体の浪人は、敵討ちを成就し名をあげたはずの滝だった。そしてその直後、奇しくも小兵衛は、清廉に生きる山崎の遺児に出遇う。 老境の小兵衛が人生の浮沈に深く思いを馳せる、シリーズ最終巻。 【テレビドラマ化常連作品】 加藤剛・山形勲(1973年4月7日 - 9月1日) 中村又五郎・加藤剛(1982年12月3日 - 1983年3月4日) 藤田まこと・渡部篤郎、山口馬木也(1998年10月14日‐2010年2月5日) 北大路欣也・斎藤工(2012年8月24日、2013年12月27日) ※佐々木三冬…音無美紀子、新井春美、大路恵美、寺島しのぶ 【目次】 深川十万坪 暗夜襲撃 浪人・伊丹又十郎 霜夜の雨 首 霞の剣 解説:常盤新平 本文より 「のう、大治郎」 と、あるとき小兵衛が、 「孫の小太郎が、お前の年ごろになるころには、世の中が引っくり返るようなことになるぞ」 「そうでしょうか」 「わしは、そうおもう。わしは、そのころ、この世にはいまいが、この目で、その世の中を見とどけたいような気もする」 小兵衛の顔つきは、暗かった。(「霞の剣」) 本書「解説」より 『剣客商売』の第一話〔女武芸者〕が書かれたとき、作者にとって死は遠いかなたにあった。 秋山小兵衛が五十九歳で、のちに息子・大治郎の妻となる佐々木三冬に会ったとき、作者はまだ四十九歳だった。だが、一冊書くたびに作者は小兵衛の年齢に近づいてゆく。そして、小兵衛が本書で無外流霞の一手で伊丹又十郎を成敗したのが、六十七歳。単行本『浮沈』刊行の翌年、池波先生は同じ六十七歳で亡くなられた。不可思議なこの一致に、私は先生が死を予感していたように思われてならない。 ――常盤新平(作家) 池波正太郎(1923-1990) 東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠。
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