〈新解釈〉三国志で一番地味な英雄の正体とは『三国志』の愛読者とまでいかずとも、ゲームや映画、漫画など何らかの形で『三国志』に接したことのある人なら、劉備の名は耳にしたことがあるに違いない。彼のことをあまたの英雄が活躍する壮大なストーリーの主人公と口にする方もいるだろう。では、劉備のヒーローらしいエピソードを挙げよと言われたら、何と答えるか。個として武勇を発揮する場面か、計略を鮮やかに決める場面か。おそらくどちらも口ごもるにちがいない。次に劉備の性格について問われたら、何と答えるか。聖人君子の鑑、いや優柔不断だと語る人もいるはずで、およそ乱世の主人公には似つかわしくないのである。講談や芝居でも、主役は闘将・関羽か、名軍師・諸葛亮であり、それは現代の小説や漫画でも同じだ。名君なら曹操を推す声が多く、美男と言えば周瑜で決まりなど、いつの時代、どの分野でも劉備の名が一番に挙がることはまれだった。劉備とは、いったいどのような英雄であったのか。豊富な文献・史料を駆使し、虚と実が入り混じる正体に迫っていく。〈本書の特長〉「自分を慕ってくれている人を見捨てることなどできない」。「仁徳の人」劉備玄徳らしい台詞である。小説『三国志演義』で描かれた聖人君子ぶり。はたして、このキャラクターは、噓か真実か。フィクションにかき消された真実の姿を探るべく、史料を丹念に読み解いていく。『三国志演義』の主人公の正体は、けっこう人間くさいものだった。〈本書の内容〉 はじめに序 章 演義と正史のギャップ第一章 一族期待の星第二章 群雄割拠の狭間第三章 新たな出会い第四章 漢を継ぐ者第五章 劉備の聖人君子化
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