老若男女皆が楽しめる怪談語りを目指し、落語や講談にも似た独特な語り節、ノスタルジックな世界観に定評がある城谷歩による怪談。 幼い頃から自身でも不思議な怪体験を数多く持ち、更に聞き集めた種々の実体験を含めるとその数は数百にも及ぶ。 そうした現代の実話怪談、奇談の中から選りすぐりをお届けする。 内容紹介 「見える人には見えたから」(32分) 失恋の傷がまだ生々しくヒリヒリ痛んでいた12月、体験者の小野屋さんという女性は友人のMちゃんに誘われてMちゃんの実家がある山梨県に遠出することになった。Mちゃんの心遣いは嬉しかった。寒い冬に一人暮らしのアパートで人知れず傷心の年越しは切なかろうと実家に招いてくれたのだ。温かなご家族に迎えられ、大みそかはMちゃんの弟や地元の友人たちと富士急ハイランドへ出向くことになった。夜遅くに車二台で大人数、ドライブと相成ったのだが二人を待ち受けていたものは。 「骨董店の鏡」(27分) 優香さんという女性の体験談。開発前の下北沢駅周辺には週替わりで面白い小さなお店が出店されていた。ある日、骨董好きの優香さんは誘われるように入った一軒の店で、アンティークの鏡に目を引かれた。オーク材の縁取りの成された古いけれど、何の変哲もないその鏡には、時代がかった美しさに加えてどこか危うさのような魅力があったという。衝動的に買い求めて帰宅すると、その危うい感じが一層気にかかり、しばらくは飾れなかった。だが寝室に置いてあるその鏡がある夜、ついにその正体を露わにすることになる。 「本当にか 前編」(26分) めぐみさんがまだ離婚して間もない頃、幼い子供二人を養うためにヘアメイクと画商という二足のわらじでてんてこまいだった時の話である。画商の仕事は全国で繋がりのある画廊に出向き作家の絵の展示や販売を行う。何年もすると各地に定宿や、行きつけの店ができるわけだが、その年はタイミングが悪かったのか新潟の定宿があいにく満室。画廊の入っているデパートにどこかいい宿はないだろうかと相談すると一ヵ所付き合いのあるホテルを紹介してくれたそうだ。当日チェックインしてみると案内されたのは4階の角部屋。入ってみると五角形の大きな間取り、一人だというのにベッドは二つ、おまけに部屋の中央には太い柱が貫いており、部屋の古さに不釣り合いな豪華な応接セット。嫌な予感がしたが果たして。 「本当にか 後編」(28分) 仕事が終わり、行きつけの飲み屋で遅めの食事とお酒を飲んで、いい心持でホテルに戻りカギをもらおうと受付を呼び出すと、チェックインの時とは別の中年男性が応対してくれた。部屋を告げると「え」?と訝しんで奥に行き何やら揉めている様子。無事カギは受け取れたがその晩の事、寝入ってしばらくすると体が動かなくなった。金縛りだと気づく頃には自由は奪われ、やがてガサゴソと引っ掻くような物音が。開いていた目を必死に音の出元に向けるとラクダ色の下着上下を着たやせこけた老人がドアをよじ登ろうと引っ掻いており更に。
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