上方講談 古典怪談の世界 近年、注目を浴びている、日本の伝統話芸「講談」。 「冬は義士 夏はおばけで飯を喰い」と川柳に詠まれたほど、 講談師は夏になると怪談を語ってきている。 クーラーのなかった時代、観客は講談師の語る世界に身をゆだね、 背筋を凍らせ、暑い夏を忘れた。 講談師の旭堂南湖が贈る古典怪談。 故きを温ねて新しきを知る。 名調子で語る「日本の怪談」ここにあり。 内容紹介 「小夜衣草紙より 蛤の吸い物」(30分) 宝暦という時代。大坂の北船場に、金持ちの若旦那で源次郎という男。これが新町の廓へ足を運びまして、小夜衣という花魁と深い仲になった。末は夫婦という誓紙を取り交わします。しかし、一年も経ちますと小夜衣の粗も見えてきて、二日に一度通っていたのが、十日に一度となる。 丁度、宝暦三年の春、桜ノ宮へ花見に参りました源次郎が、松平出羽守のお蔵屋敷を預かっている大野千左衛門の娘、お絹。このお絹に一目惚れ。恋煩いでございます。 縁談の申し込み。源次郎はお絹と結婚することになりました。それを知った小夜衣は剃刀で己の喉を切り裂いて絶命。いよいよ、婚礼の当日、小夜衣の亡霊が現れる……。 「恨みの鎌」(35分) 大和郡山から少し離れた寒村。ここに又兵衛という男があり、女房はお松。又吉という息子。 ある日、又兵衛が柴を背負って歩いてると、村松角右衛門という侍が馬にまたがって駆けてくる。馬の鼻先が又兵衛の背負っている薪に当たって、村松角右衛門は落馬した。村松はカッとなって、又兵衛を切り捨てた。夫を殺されて、泣くお松。 そんなある日、又吉は大勢の子供たちに「無念残念口惜しいを知らん奴。意気地なし」と馬鹿にされた。メソメソ泣きながら戻って参りまして、このことを母に話すと、お松は黙って、又吉を連れて、又兵衛の墓の前までやってきた。 この後、お松は我が身に代えて、「無念残念口惜しい」ということを教えてくれる……。 「真景累ヶ淵より 豊志賀の死」(18分) 近世落語界の名人、人情噺の大家、三遊亭円朝師の原作・真景累ヶ淵の内の一席。「宗悦殺し」の二十年後の物語。 江戸、池之端根津七軒町。富本節の師匠で豊志賀。年は三十九の女盛り。豊志賀宅の二階に弟子として住んでいたのが、下谷大門町の煙草屋勘蔵の甥、新吉。役者のようないい男。いつしか男嫌いの豊志賀といい仲になりました。 ところがこれが悪縁でして、豊志賀の父親は皆川宗悦といって按摩の金貸し。それが丁度今から二十年前、豊志賀が十七の時、深見新左衛門という旗本に斬り殺された。 その新左衛門の息子が新吉。当時生まれたばっかり。さあ、敵同士が恋人となって、これから二人はどうなりますことやら……。 「蘇生奇談」(27分) エドガー・アラン・ポーが書いた「早すぎた埋葬」という作品があります。 これは生きながら土に埋められる恐怖を描いた名作ですが、似たような話が、日本の明治時代にも実際にありました。 植木屋で五兵衛という男。女房がおさきと申しまして、二人暮らしで子供はございません。この五兵衛さんは大酒飲み。 ある日、池辺さんという家へ仕事に行きまして、仕事を終えた後、焼酎を一升呑んだ。五兵衛さん、家に帰ってきたが、玄関先で倒れて気絶。女房が医者を呼ぶが、この医者は俗にタケノコ医者といって、後に藪医者に育つという頼りない医者。 このお医者さんが診察して、死亡診断書を書いたのでした。 当時は土葬。五平衛を寺へ運んで土に埋めたのですが、五兵衛は気絶をしていただけで、次第に知覚神経が回復してくると、墓の中で目を覚ました。 さあ、どうなる……。
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