天草で生まれ育って76年、その間父が郷土史家でもあったので、昭和61年からキリシタン資料館(サンタマリア館)を父と共に経営、そのような影響を受けて私も診療のかたわらキリシタンに興味を持ち、その研究を続けてきました。 そして平成11年には「かくれキリシタン:信仰の証」(320頁)を出版、13年には恩師の平田正範氏の遺稿として「天草かくれキリシタン:宗門心得違い」(290頁)を、また15年にはオラショの研究として「天草の伝承キリシタンとオラショ」(580頁)を出版しました。また平成3年から「全国かくれキリシタン研究会」に所属し全国のキリシタン遺跡や墓碑の調査も行ってきました。このような経過の中で、感じ、見たことをここにまとめたものがこの著書です。いわば「私と父の足跡」です。第1部「天草のキリシタン・遺跡と伝承」平成31年には天草は長﨑と共に「潜伏キリシタン関連遺産」として登録され一躍脚光を浴びています。訪れる人たちは、ゴシック様式の教会とステンドグラスのロマンだけを感じながら安心して帰っているようです。しかし一方ではキリシタン遺跡や墓碑は叢に埋もれ、荒れ果てて朽ちかけています。そしてそれを守って伝承してきた人たちも皆無になってきています。今、ここでこれらを遺しておかないと永遠に消えてしまいます。30年間の集積をここにまとめました。第2部では「キリスト教の図象学」(石の証言)と題して、全国の石像仏や墓碑を30年間猟歩して統計学的にまとめました。これは石に遺された「信仰の証」であり「石の証言集」でもあります。これについては現在まで学問的にはまとめられたものは見当たりません。キリシタンが象徴としてきたものは十字架だけではありません。その上キリシタンは永い潜伏の間、他宗と混成し変容してしまっています。そのような観点からも考察が必要となります。「石に遺された信仰の証」は当時のキリシタンの信仰の状況や心の様相まで窺うことができます。特に兵庫県の加西市の五百羅漢仏をはじめ周辺のキリシタン仏は感激です。しかし未だにキリシタン石造仏として認められていません。今後の研究の一助となれば幸いです。この章でも加西のキリシタン仏は多く扱っています。科学が発達した現在では荒唐無稽に思える祟りや呪い、そして天国や地獄観も当時の彼らにとっては当然であり大切なことだったのです。石に遺された彼らの祈りを見るとき、化学の発展は果たして人類と地球を幸せにするのだろうかという疑問も湧いてきます。歴史は民衆の心を離れては成り立たちません。
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