科学と科学哲学を架橋する、科学哲学からの試み。 「因果とは何か」、「そもそも科学は何を知るのか」、「科学者は“価値”をどこまで語ってよいのか」。科学哲学はこうした問いを掲げながら、必ずしも科学そのものとは交わらない独自の発展を遂げてきた。本書は、本来あるはずの科学哲学と科学の接点を探るべく、「因果性」「実在/反実在」「価値判断」の三つの問題群に着目。専門外の読者も想定し、分野内部でどんな論争が繰り広げられてきたのか、そこで一体何が問題にされてきたのかを案内する。さらに「ジカウイルスと小頭症」、「IPCCによる気候変動の人為起源説」、「地震学者たちの責任と価値判断」など、具体的かつ広範な事例を取り上げ、科学・技術の実践のなかにすでに科学哲学的問題が存在していること、そして「統計哲学」の視点から開ける新しい眺望を見る。――分野をまたぐ科学哲学の役割を確信し、誠実な研究を重ねてきた国内屈指の科学哲学者による、初の単著。 【推薦の言葉】「これまで『科学と証拠』『科学とモデル』など重要な科学哲学書の翻訳を手掛けてきた松王政浩氏が、ついに長年の思索と研究の成果を一冊の書籍にまとめた。本書は、因果について、実在について、科学と価値の関わりについて、異なる視点を持つ哲学者と科学者がいかに協働すべきかという問いに著者独自の解答を示す。本書は科学と哲学のよりよい関係をめざすすべての人への著者からの熱いメッセージである。」――伊勢田哲治(京都大学)「科学哲学というのは科学を上から見て論じるのだろうと勝手に思い込んでいたが、科学と科学哲学は対等な立場で対話するのだと松王さんはいう。しかも、科学哲学の主要な論点と学説の系譜をこれだけ見通しよく示してくれた上で、対話をしましょうと手を差し伸べてこられたら、科学は科学哲学との対話に喜んで応じるしかないではないか。それによってお互いに得られる気付きは豊かであるはずだ。」――江守正多(国立環境研究所)
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