今回,第40号の特集は「,アルツハイマー病の疾患修飾療法の現状と展望 -臨床試験はどこまで進んでいるか」です。お気づきになられた読者の方々もいらっしゃるかもしれませんが,ほぼ同じ特集を第34号で組ませていただきました。その号が好評であっただけでなく,この1年でのアルツハイマー病(Alzheimer's disease: AD)の疾患修飾療法(disease-modifying therapy: DMT)開発に関する大きなニュースが相次いだため,編集委員会満場一致にて,敢えてこの40号でほぼ同じテーマで,そして34号と同じ先生に執筆をお願いさせていただきました。 いくつかの「大きなニュース」の詳細は各項に委ねますが,セクレターゼ阻害薬等の臨床試験の失敗で疑問視されてきたアミロイド仮説に光が射してきました。一つは, aducanumabのニュースです。新たなデータを追加した合計3,285例のデータを解析した結果,高用量投与群が主要評価項目であるClinical Dementia Rating-Sum of Boxes(CDR-SB)において, 78週でのベースラインからの臨床症状悪化抑制について,プラセボ投与群に比較して統計学的に有意な効果を示しました。また,アミロイドPETでは低用量群および高用量群の両群においてアミロイド斑の減少が確認されたと報告されています。そしてもう一つは,抗プロトフィブリル抗体の臨床試験に関してのニュースです。2012年よりプロドローマル期から軽度ADを対象にした第II相試験が施行され, 2018年に18カ月の時点でアミロイドPETでの脳内アミロイド斑の減少とともに臨床症状の進行抑制が認められたことが報告されました。これにより, 2019年よりプロドローマル期から軽度ADを対象にした第III相試験が実施されています。 もちろん,抗Aβ療法だけでADの病態すべてを修飾できるわけでなく,もう一つの病態蛋白であるタウに対する抗体療法やiPS細胞技術を用いたDMTの開発も,近年めざましく進歩しています。 現実的には時間的猶予があまり残されていない中で,本特集では再度「ADのDMT開発の現状と展望」に関して,この分野の第一人者の先生方にわかりやすく解説していただきました。本特集で取り上げた内容をご参考にされながら,皆様が今後の日常診療を進めてくだされば,編集者として幸いに思います。(小野 賢二郎)
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